雨天炎天(新装版) 村上春樹 新潮社 2008年2月25日 発行 |
毎晩、就寝前に少しずつ楽しみに読んだ。村上春樹の文章は平仮名が多い。それだけ紙面が白っぽく見える。漢語が少ない。一見すると取っつきやすく感じる。語彙も難解な評論用語は出てこないし。これは小説だけではなく、エッセイや本書のような紀行文でも同じだろう。もしかすると中学生レベルの語彙だけで書かれているのかもしれない。
うーむ。こういう問題に対してはシソーラスが関連するのだろうから、コンピュータを駆使すればたちどころに解決してしまうのだろうな。
ギリシャのアトス半島とトルコの周囲を一周するという二つの旅行記を一冊にまとめたもの。
前半のギリシャのアトス半島というのは徒歩で回ったもの。ここはギリシャ正教の修道院が集まったところで、女人禁制のほかいろいろ規制も厳しいところなのだそうだ。現代にもこうしたところがあるということに興味をひかれる。
後半のトルコ一周はパジェロだった。なんでもそのために村上氏は免許も取得したというような記述があった。途中、テロに襲われてもおかしくなかったような危険地帯をくぐり抜け、なんとか一周下という内容。
本書の初出が『雨天炎天』(1990年8月小社刊)とあるので、前後半ともに80年代のことだろう。いやはや。著者と同行したカメラマンや編集者氏も大変だったことだろう。内田百閒の阿呆列車シリーズにおけるヒマラヤ山系氏を思い浮かべた。
現地での感想に汚いなどの嫌悪感を率直に記述したところが新鮮。その後のエッセイには、このようなマイナス表現は見あたらなくなるのに、ここでは何度も書いている。
その昔、ギリシャ滞在時のエッセイを読んだ記憶があるのだが、書名以下まったく思い出せない。たしか家の前にコンロを持ち出して、魚を焼いている白黒写真が載っていたのを記憶しているくらいで、あとはほとんど忘れてしまった。
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