[NO.1218] パンセの原点をさぐる

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パンセの原点をさぐる/今日のキリスト教双書23
田辺保
新教出版社
1976年8月10日 初版発行

ラフィマ版『パンセ』の翻訳者による著書。

p14

本書において引用される『パンセ』訳文(および断章番号)はすべて、新教出版社版のラフュマ定本版に基づく、小訳『パンセ』(一九六六年初版)によることとする。できるならば、読者諸氏が同版『パンセ』の一冊を座右にそなえてくださることを期待するが、本書巻末には、一般の便宜を考慮して世に流布しているブランシュヴィク版断章番号との対照表を掲げることにした。

巻末に対照表が13ページにわたって添付されている。
『パンセ』断章番号対照表(ラフュマ版-ブランシュヴィク版)。

p182 目次でいえば「Ⅳの1」

エチエンヌ・ペリエの序文に明記されている、パスカル没直後に作成された写本とは、現にパリ国立図書館に収められている「第一写本」と称される『パンセ』のコピイそのもののことではあるまいかとの直観が、第二次大戦後にザカリー・トゥルヌールにひらめいたとき、『パンセ』の歴史は一つの転機を迎えたのであった。これまでの編者たちは、最初のこのコピイはすでに失われたとか、現存の「第一写本」は、ポール・ロワイヤル版の刊行に備えて作られた、改訂原稿にすぎないとか考えてきたのであった。トウルヌールには、驚くべき洞察とともに、なお重大な考え方の誤りが残っていたのであるが、かれのこの直観を受け継ぎ、さらに綿密な考証と精緻な検討を進めて、この推定の確かさを証明したのが、大学に属さぬ市井のパスカル学者ルイ・ラフュマであった。ラフュマは、第一写本をパスカルの自筆原稿綴りとこまかく比較照合して、そこに意外とも言える多くの一致点を見出して行く。ラフュマの精細をきわめた推理と、その結果に基づく大胆な断定のおもしろさは、とにかく比類がなく、少なくとも一六六二年八月当時に、パスカルが遺したこれら紙片のそのときの状態を(まさしく、奇跡的に)、現在にまで正確に記録として伝えている、じつに貴重な文献の実在が、こうして明らかにされたのであった。そこで、第一写本の順序に従い、国立図書館のマニェスクリを並べかえてみるならば、原稿はここにふたたび、パスカルの死んだ時点とそっくりそのまま、同じ姿を呈してよみがえってくることになる。

目次
Ⅰ パスカルと『パンセ』――序にかえて
1 『パンセ』とは、どんな書物か
2 『パンセ』を書くまで――パスカルの生の歩み

Ⅱ ひとりの人間として
――『プロヴァンシアル』から『パンセ』への途上で
1 発端まで
2 ジャンセニスムの成立
3 パスカルの参加
4 この闘争の過程にあって
5 ひとりとなる場へと
6 宗教の基礎とは何か
7 奇跡の意味
8 さらに大きい敵に向かって

Ⅲ 人々との交わりの中で
――「社交時代」のパスカル
1 社交生活の時期は、いつか
2 「人間の世界」を知る
3 十七世紀フランスの社交界の実情
4 「気ばらし」にふけるパスカル
5 デ・バローの悲しみ
6 心動かさぬミトン

Ⅳ 愛にまで達しないものは
――『パンセ』の語ろうとした唯一のこと
1 ラフュマ版の実現まで
2 「空しさ」の底で
3 愛のみがすべて


あとがき
『パンセ』断章番号対照表

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