[NO.1216] パンセ/ルイ・ラフュマ版による

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パンセ/ルイ・ラフュマ版による
パスカル
田辺保 訳
新教出版社
1966年2月15日 初版発行
1968年7月10日 再版発行

先日の朝日新聞夕刊の記事で知ったラフュマ版『パンセ』。なんとか読むことができた。

どの版も今まで読んだことがなかったので、いったいどんなものなのやら......。読み始めてみると、これが実に読みやすい。およそこれまで読んだどの哲学書と比べても、あっけないほど。

神学関連のものに難しい語彙があるが、それらを除外すれば読める。翻訳も含め、読みやすい文体を重視する身にとって、これは以外だった。長い章節も例外ではない。

有名なクレオパトラの鼻の記述も、上記新聞記事にあった森岡氏がいうところの宇宙とダニ(の中の血液)との対比している箇所も、あっけなく見つけられた。

で、通読後の感想は思っていたよりも科学的であること。特に上記宇宙とダニとの対比を含め、視点が近代科学のパラダイムでなんら違和感のない思考を感じるところが多かった。17世紀有数の幾何学者であり実験物理学者だったことを忘れてはならない。また、世俗的な比喩の多さも特徴だろう。

『パンセ』が書かれた背景を知っていれば、なるほどと思うしかない神学についての記述の多さは、こういうものか、と思いながらの流し読みになった。聖書を知らずしては理解できそうもない。しかも、パスカルが属したヤンセン派(ジャンセニスト)としての視点を押さえなくてはその理解も難しいとあっては、おいそれとは手が出せそうにない。

文中、モンテーニュとデカルトに対する意見陳述が出てくるのはなぜなのか、と疑問に思ったが、両人への対抗心から発しているとのこと。なるほど。それにしてもパスカル氏、おなかにとげとげの鉄製ベルトをして、自分を痛めつけては努力して(?)いたという。『ダ・ヴィンチ・コード』を思い出す。

※   ※   ※

表紙をめくった裏側に1葉の絵が糊づけされている。絵の周囲1ミリくらいの幅で切り抜かれたものらしい。おそらくハサミででも切られたものだろう。裁断された線が微妙に曲がっている。で、この絵はなんであろうか?パスカルの生家ではなさそうだし、例のポール・ロワイヤル?

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目次

凡例......4

パスカル氏の生涯......ジルベルト・ペリエ......9
ポール・ロワイヤル版の序文 1670年......61
国王の出版許可書〈抜粋〉......80

第一部

Ⅰ まえがき......83
Ⅱ 序論......87
一 順序......106
二 空しさ......112
三 惨めさ......130
四 退屈と人間の本質......144
五 結果の起こる理由......147
六 偉大さ......158
七 矛盾......165
八 気ばらし......177
九 哲学者たち......187
一〇 最高の幸福......193
一一 ポール・ロワイヤルのために......197
一二 はじめに......207
一三 理性の服従とその利用......219
一四 この神の証明方法がすぐれていることについて......224
一五 人間を知ることから神に移って行くこと......226
一五2 本性は堕落していること......238
一六 他の宗教はいつわりであること......238
一七 愛される宗教......247
一八 宗教の基礎と反対論への答え......250
一九 象徴としての律法......265
二〇 ラビの教え......291
二一 永続性......294
二二 モーゼの証拠......310
二三 イエス・キリストの証拠......312
三四 預言......322
三五 特別な象徴......352
三六 キリスト教の倫理......352
三七 結論......366

第二部

個人的な覚え書き......373

訳注......387
解題......429

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