[NO.1177] 本を読む人/片岡義男エッセイコレクション

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本を読む人/片岡義男エッセイコレクション
片岡義男
太田出版
1995年5月26日 印刷
1995年6月10日 第1刷発行

出版年がちょっと古いのが残念。ちっとも古さを感じないが。

途中、著者が片岡義男ではなく、青山南であるかのような錯覚に陥る。気になるペーパーバックを片端から買い込んで、後日、ゆっくり読んでいくという。したがって、気に入った読書をしたければ、自分の蔵書から見つければいいのだとのこと。なんともうらやましい限り。

それは小説だけに限らないとも。この時代、まだネットによる検索と取り寄せなど思いも寄らないときだった。ペーパーバックによって読むことのできる範囲の広さが、日本語によるだけの読書しかできない身にとっては、うらやましくて仕方なかったことを思い出す。広範囲にわたってカバーされた英語圏の出版状況が、神話のように語られていたものだ。

p267に「アネクドート」なる語を見つけて、あれま。これって、開高健・谷沢永一・向井敏との書評対談で目にして以来。ロシア小説の紹介で出てきた。

読みたくなったのが、p24ロバート・ロスナー著『誰かほかの人の虹の端』。このタイトルで検索かけても出てこず。ロバート・ロスナーで探すと『虹の果てには』がポケミスにあり。たしかに、『誰かほかの人の虹の端』というタイトルのペーパーバックを買ったと書いてあるの。原題は『THE END OF SOMEONE ELSE'S RAINBOW』とのこと。

おやっと思ったのは、二人で対話をしている形式。街中のカフェで編集者と会い、そこで本を紹介しているという体裁をとっている。これはかつて、小林信彦氏が使っていた。

惜しむらくは、「初出」と「索引」のないこと。1980年代なかばから、あちこちに書いたものを吉田保というフリーランスの編集者がまとめたものだという。