[NO.1162] 荷風 百閒 夏彦がいた/昭和の文人あの日この日

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荷風 百閒 夏彦がいた/昭和の文人あの日この日
大村彦次郎
筑摩書房
2010年8月25日 第1刷発行

表紙がいい。カバー装画が川上澄生の版画「銀座」(「新東京百景」)。写真協力として鹿沼市立川上澄生美術館の名が挙げられている。

ブログdaily-sumusに本書の記事あり。運営者の林蘊蓄斎こと林哲夫氏が本文イラストを12点載せているのだという。ちっとも気づかなかった。各章立ての扉を飾るカット風のイラスト。すぐに気がつかなかったこちらの迂闊さ。

さて、内容なのだが、これがユニーク。ゴシップ風と呼んでは語弊がありそうだが、著者大村氏がそれぞれの小説家にまつわる話題を短いコラム風にスケッチした文章を羅列したもの。そのどれをとっても、対象となる文士の姿を的確に捉えている。そのエピソード集ともいえる短文の数の膨大なことといったら、とんでもなく大量なコラムの集大成とでも呼べばいいのだろうか。その数、約三百。それらを昭和の年代ごとで編集してある。巻末には登場人物索引がある。それを見ると一番多く取り上げられている作家が一目でわかる。トップは井伏鱒二の29回。

もともと、こうした芸能人のゴシップ風文章が好きなので、毎晩ちょこちょこと読み進めた。読み出すと止められなくなる。

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お恥ずかしい話なのだが、戦前によく出てくる出版社名「砂子屋書房」の読み方。ただしくは「まなごやしょぼう」。そういえば、以前にその読みで漢字変換するよう、単語登録した記憶あり。すっかり忘れていた。さきほどネット検索したところ、現在も出版社として健在。サイトはこちら

p53
太宰治の処女創作集「晩年」が砂子屋(まなごや)書房から刊行され、上野精養軒で出版記念回が催されたのはその年の七月十一日。