真性活字中毒者読本/版面考證/活字書体史遊覧 小宮山博史、府川充男、小池和夫 柏書房 2001年9月30日 初版第1刷発行 |
『活字中毒者地獄の味噌蔵』(椎名誠著、本の雑誌社刊、1981年)あたりから、しきりと使われることの増えた「活字中毒者」という文言。「はしがき」で説明されている本書でいうところの「活字中毒者」とは、意味合いが異なるという。
一般にいうところの読書好きと違って、本書でいう「活字中毒者」とは、文字通り「活字」書体そのものを愛して止まない人々のこと。それを称して「真性活字中毒者」なのだそうだ。いやはや、この世界、奥が深いこと。本書を読めば読むほど、引き込まれそうになる。
その昔、某氏のブログで、今は使われなくなった鉛活字を安く手に入れて喜んでいるという記事を目にしたことがあった。その当時には、そういう趣味もあっていいのか、と一瞬思っただけで、読み過ごしてしまったものだが、今、本書を読んだ後で思い返すと、とんでもない世界だったのだと気づく。
いかん、いかん。自分がその道に引き込まれそうになっているのをひしひしと感じるのだ。せっかく、物をため込まないと決意したばかりなのに。
中身はいわゆる活字にまつわるお話だけでなく、美しい画像が満載されていて、ページを繰るだけで飽きない。しかも、造本装幀も申し分ない。ページ数が395。大きさもほどよく、なによりパタンと開いたページを閉じたときの「音」が大変良い。久しぶりに、この音を耳にした気がする。
惜しむらくは、DTP時代の話題が多かったこと。もっと、古活字話が読みたくなった。矛盾するようだが、巻末第七章「インタビュー――府川充男 印刷史研究と電子組版の往復運動」にある専門的な話題は、それはそれで興味深かった。
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著者たちの対談を読んでいると、頭がクラクラしてくる。こちらも活字中毒であることを自認していたのだが、ここまでくるととてもついていけそうにない。単なる本好きで結構といいたくなる。以下、抜粋。
「印刷史研究」の現場から
p117
小宮山 府川君も僕もそうだけど、集めているのがちょっと偏った古書でしょ。僕は活字の見本帖だし、府川君も明治以降の活版印刷物が多い。
【途中略】
p118
府川 小宮山さんの本は、小宮山さんが死んだら、横浜開港資料館にしろどこにしろ、公的なところへ行くことになっている。俺が死んだら、俺の溜めた資料は小宮山さんのところに行くことになっている。何だか割に合わない気がする(笑)。初出『ユリイカ』第二十九巻第七号(青土社、平成九[一九九七]年(六月)。同号の特輯は「古書の博物誌」であった。
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目次にある「第五章迄の主要図版目録」だけでも、たまらぬ魅力。
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