[NO.1145] 東京ひとり散歩

tokyohitorisanpo.jpg

東京ひとり散歩/中公新書2023
池内紀
中央公論社
2009年9月25日 発行

いつぞや、テレビ番組で嵐山光三郎氏との対談に池内紀氏が出ていた。二人は旧知の仲といった様子で和やかに歓談。その中で嵐山氏が紹介していたのが、本書にもちょろっと出てくる池内氏のリュック。旅をするときに愛用しているというそれは、小振りながら魅力的だった。中に収められている品々も面白かったので印象に残っている。

お二人は一緒に温泉などへ出かけることもあるのだとか。池内氏曰く、別荘などというものは持たない。その代わりに馴染みの宿をもっているのだという。いつでも好きなときに連絡をすれば泊まりに行けるところが良いのだとも。したがって、繁盛してしまっては困るので、決して雑誌などで紹介したくないのだとも。

本書は泊まることはなく、日帰りでふらっと散歩できる都内の各所紹介。こうした内容の本が数ある中で、池内紀氏の魅力ある随筆によって、読ませる内容となっているところが特徴。雑誌によくある紹介記事と違って、著者が楽しんでいるところが何よりのよさ。

書評というのは、読み終わってから、紹介された本を読者が手に取りたくなるのがいいという。本書を読み終わってから、その場所へ出かけたくなった。

賑やかなところより、駒込駅北にある霜降銀座商店街を紹介した「値札と夕日」や、著者が上京後に住んでいたという雑司ヶ谷界隈の「鬼子母神懐古」がいい。もっとも著者がよく出かけるのは銀座だそうだが。