[NO.1140] KAGEROU

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KAGEROU
齋藤智裕
ポプラ社
2010年12月15日 第1刷発行

話題の本には手を出さない。しかも、芸能ネタのニュースにも興味がない。そのため、今ごろになって読んでみた感想は、「こんなお話だったの?」でした。思ったよりも小説らしいことに驚いています。某書評家曰く、文章がこなれていない、とのこと。それって失礼ではないかな。久々にみた表現。こなれた文章っていいな。

p29と30のノンブルを手書きにしているというおふざけは村上春樹氏の初期を想起します。そういえば、十字マークのロゴという発想も、似ているなあ。文中に村上氏の名前、一個所出てきたし。ってことは、カート・ボネガットからの一連の流れってこと?

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しかし、最後のシール貼りというサービスにはびっくり。(これがミスとは思えない)。読者が読み取れないだろうという予測のもとに行われたサービスという指摘に賛成です。大森望氏曰く「ご愛敬」だそうな。当方の読書経験で、こんな驚き方をさせられたのは初めてです。ここまでやるか? という疑問と、これだけサービスしているんだ! という推察?

■いくつか、気になったことを挙げると。

1)特定の語句をカタカナ表記している。これって、恥ずかしくはないのかな?

p4
至難のワザだ。
p5
この厄介で面倒な人生とも永遠にオサラバできる。

2)比喩のステロタイプ。開き直ったらできるのかな。とりあえず、代表例を

p56
二人を乗せたクルマは、温めたフライパンの上を滑るバターのように静かにゆっくりと走り出した。

3)現在41歳のヤスオが子どものときに聞いたのは、何歳でのことだったのか?

p145
先頭の機関車に取り付けられたスピーカーからは、ヤスオが大好きだった皆川おさむの『黒猫のタンゴ』が流れている。

この曲が流行ったのは1969年のこと。つまり、主人公のヤスオさんが生まれた年と同じ。生まれたてゼロ歳のときにヒットした唄を覚えていられるはずもなし。この唄、その後何年間も公共の場で流れていたとも思えないし。
せめて、その10年後に流行った円広志の『夢想花』あたりにしたらどうだったのかな。

4)これは架空の本?

p200
『ブロスと愉快な仲間たち』
『いつかキミがこの病院にいることがどうしても耐えられなくなったとき、この地図を頼りに異世界へ脱出してごらん』
『地図を見つけた人は、必ずこの本の二十九ページと三十ページのあいだに挟んで元の場所に戻しておくこと』
今度会うときまでに考えておくこと。宿題ね!