日本図書館紀行 海野弘 マガジンハウス 1995年10月19日 第1刷発行 |
最近、ブログなどでも図書館にまつわる内容を目にすることが増えています。もともと図書館についての本は数多いもの。しかし、本書の特色といえば、あの海野弘氏がわざわざ全国の公共図書館へ足を運んで書いたという点でしょう。15年も前に、こんな仕事をしていたとは。まるで駆け出しのルポライターによる紀行文のよう。
初出は雑誌『ダカーポ』(1993年10月20日号~95年10月4日号)。
珍しくもなさそうな地方都市で、図書館に入るというのは大好きなので、なんだかそれだけで好きになってしまった内容。惜しむらくは、著者の旅では時間不足により、図書館での滞在時間がほとんどとれなかったことでしょう。そこで著者が考え出した方法がいい。
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一日で、一つの図書館を見て、街を歩く、というのもきついスケジュールであった。だから郷土資料の棚を見るのに限定した。それでも、いくつものテーマを見ることはできず、やがて、図書館のある街の近代史、特に、私が好きな、〈一九二〇年代〉のモダン都市の記述を読むことにした。映画館、カフェ、百貨店などが出現してくるモダン都市を、地方の街々で発見していくのは楽しい作業だった。そこには、路地や横町のユニークな資料もあった。
それらの資料を見てから、街に出ると、通りや盛り場がどんなふうにできてきたかを読みとることができた。つまり、図書館という入り口から街に出ることで、都市を一つの図書館のように読みたいと思ったのである。だからこの紀行は、図書館の旅であると同時に、都市の物語でもある。
海野氏が全国のどこの図書館へ足を運んだのか、例によって目次を写そうとすると、先行者がおられました。海野氏の著作著作目次をネット上で公開されているとのこと。こちら。
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