遅刻の誕生/近代日本における時間意識の形成 橋本毅彦、栗山茂久 編著 三元社 2001年8月25日 初版第1刷発行 2001年10月15日 初版第2刷発行 |
こういう本もあるのですねえ。昨年末、朝日新聞の天声人語で紹介していたので手にしたもの。ここで読まなければ、知らないままでいたことでしょう。
ところで、天声人語ってネットで見られるようになっているので、昨年の12月26日にリンクを張っておいたら、今となっては見られなくなってしまっています。有料契約をしていないと、古くなっては見られなくなるのだとか。あれま。ウチは何十年も朝日なんですけど。
先ほど、出版社サイトを見ていると、その中にスキャニングした該当の天声人語を発見。こういうのは、著作権ってどうなっているのでしょうか。
で、本書について。著者ではなく編著となっているように、いくつかの文章をまとめたもの。書名になっている『遅刻の誕生』という発想が本書の眼目であり、うまい着想です。その昔、アナール学派の紹介とからんで、『子どもの誕生』(フィリップ・アリエス著、みすず書房刊)という本があり、買いましたね。斜め読みで終わってしまい、むしろ言及していた他書ばかり読んだもの。そんなことを考えながら読書。
以下に目次を抜粋します。
目次
序文
第一部 定時志向 鉄道がもたらしたもの
第一章 近代日本における鉄道と時間意識 中村尚史
第二章 一九二〇年代における鉄道の時間革命/自動連結器取替に関連して 竹村民郎
第二部 時間厳守と効率性/新労働管理の発展
第三章 近世の地域社会における時間 森下徹
第四章 二つの時刻、三つの労働時間 鈴木淳
第五章 蒲鉾から羊羹へ/科学的管理法導入と日本人の時間規律 橋本毅彦
第三部 時間の無駄のない生活/子どもの教育と主婦の修養
第六章 子どもに時間厳守を教える/小学校の内と外 西本郁子
第七章 家庭領域への規律時間思想の浸透/羽仁もと子を事例として 伊藤美登里
第四部 新暦と時計の普及/近代的タイム・フレームの形成
第八章 明治改暦と時間の近代化 川和田晶子
第九章 歳時記の時間 長谷川櫂
第十章 明治時代における時計の普及 内田星美
第五章 時間のゆくえ
第十一章 農村の時間と空間/時間地理学的考察 新井良雄
第十二章 「時は金なり」のなぞ 栗山茂久
文献解題 時間を考えるための五〇の文献 橋本毅彦
※ ※
序章に本書の概要が載っており、参考になりそう。で、天声人語にもあるように、明治初期のお雇い外国人が嘆いたという当時の日本人による悠長な時間感覚とは、なるほど時計を意識していなかったということからなんとなく納得できそう。
p5
(江戸時代以来、お城の太鼓が告げる「時」感覚とはを説明したことに続けて)ただしその時間の認識の精度は、特別の仕掛けを使ったり注意を傾けない限り、約二時間を表す一刻の時間を分割した三、四〇分程度がいいところだったろう。要するに、現代人が日常生活を忘れるために時計をもたずにのんびりと休暇を楽しむ時と同じような時間に対する感覚を、江戸時代の人間はもっていたと考えられる。その時間感覚が、明治以降の近代的な社会システムの導入によって、抜本的な変更を強いられるようになったわけである。
腕時計をはずして過ごす休暇の感覚ですか。ふーむ。なにやら身につまされそうな。
旧暦から新暦導入にいたる経緯は、高島俊男氏が書いていましたねえ。
巻末の橋本毅彦氏による「文献解題 時間を考えるための五〇の文献」が、これまた面白し。
コメント