[NO.913] 本の狩人/読書年代記

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本の狩人/読書年代記
山口昌男
右文書院
2008年10月10日 印刷
2008年10月20日 発行

 読みであり。書評関連の文章を年代順に並べたもの。最後が2003年なのですが、スタートが1959年というところが特徴。

1966年を抜粋すると
本多勝一・文、藤木高嶺・写真『アラビア遊牧民』
竹中労著『美空ひばり――民衆の心をうたって二十年』

こんなこともやっていたのですねえ。

  ※  ※

 坪内祐三氏を扱ったところが面白し。
p343
〈書評〉坪内祐三著『ストリートワイズ』『シブい本』
 林達夫・花田清輝以来なかなか出現しなかった、まるで新しいタイプの本の読み手が現れた。彼は評論家・書評家・文学批評家、元雑誌編集者(『東京人』)等、大学で教えていないことはないけど、年齢とその博学に見合うにふさわしい大学助教授という肩書きはない。彼の名は坪内祐三。どうも制度の依拠するステータス上昇志向はないらしい。
以下略
 これだけ手放しで賞賛されたツボちゃんの書評は他で目にしたことなし。上記文章と前後するかたちで、古書関連書では有名な『月の輪書林古書目録』に触れた内容で、面白いエピソードを紹介。
p342
 著者は、アカデミーというものを一切通って来なかった月の輪書林主によるこの目録を、アカデミーの頂点にある人達によって書かれた『知の技法』や『「超」勉強法』などの、マニュアル本の対極にあると賞讃した。この批評に対して東大教授野口悠紀雄氏が週刊誌で猛烈な反論を行い、著者を「立ち読み評論家が」と論難した。著者はそれに対して少しもひるむことなく「読むとはどういうことか」で、冷静に野口氏の逆上をたしなめた。
 いいですねえ。野口氏による「立ち読み評論家が」というフレーズも目を奪われるようなヒット作ですが、その論難に対し、少しもひるむことなく冷静に逆上をたしなめた、という表現に拍手。秀逸。