文學界/特集 倉橋由美子の魔力 文藝春秋社 平成21年4月号 第63巻第4号 |
なぜ、今頃倉橋由美子特集なのか、最後までわからず。見開き7ページにわたる加藤典洋・関川夏央・川上未映子の3氏による座談会からも??? タイトルが「「大江と村上」の間を生きた孤高の作家」。なんとなくわかったようなわからぬような。
加藤典洋氏の発言に少しだけ、なーるほど。
p151
加藤 倉橋さんの登場がどのような衝撃をもたらしたかは、今からだと見えにくくなっているでしょうね。たとえば新潮文庫版『パルタイ』の解説は、森川達也という人が書いている。この人や日沼倫太郎といった批評家が、サルトルやカミュを論じると同時に、大江や倉橋を積極的に評価する論陣を張っていたんですが、サルトル、カミュが後景に退いていくにつれ、倉橋さんが、彼女を支持していた人たちの批評ごとストンと落ちていく。川上さんは、森川達也、日沼倫太郎なんて名前、もう知らないでしょう? このあたりの一世代が、何か胎盤ごと流産した印象があります。僕らの世代まではみんな最初フランス文学から入って、途中からアメリカ文学の方に行った。村上春樹とサリンジャー、フィッツジェラルドの関係のように、アメリカ文学と現代日本文学の対応はまだ見えているけれど、フランス文学との重なりのほうは大江以降、骨が脱臼したように外れて視界から消えている。倉橋さんのいまの孤絶というのは、その象徴みたいなところがあります。
それにしても、若い人の間でカルト的な人気だなんて。そういえば、何年か前に神保町小宮山書店で新潮社『倉橋由美子全作品』全8冊揃いがそこそこの値段だったのに驚いた記憶あり。軒並み全集ものは暴落していますから。付け足せば、これは自分でも持っていたけれど数年前に処分してしまいました。
北 杜夫氏が選ばれたに理由には納得。昭和35年上半期芥川賞に『夜と霧の隅で』が選ばれたとき、『パルタイ』で同時候補だったとのこと。なるほど。発表号の「文藝春秋」には「夜と霧の隅で」と並び「パルタイ」も掲載されたのだとも。
p164
私も後で読んでみて、「自分より才能がある。私の作品は古くて、倉橋さんの方が新しい」と正直思い、仕事で付き合いのあったご主人の熊谷さんにもそう言ったことがあります。彼は肯定しませんでしたけれども。
仕事で付き合いのあったご主人の熊谷さんってどういう人?
面白いなと思ったのは中野翠氏の文章をはじめ、座談会の発言にもあった、「あるときから読まなくなった」ということ。妙に納得。安部公房氏の作品も同様でしょう。'70年代が終わったころからでしょう。書店からも消えました。
この特集が終わった次ページ、
p178/エセー/生誕一〇〇年めの中島敦/勝又浩
興味深し。アーカイブス2へ
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