[NO.826] 小林一茶と房総の俳人たち

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小林一茶と房総の俳人たち
杉谷徳蔵
暁印書館
昭和56年9月15日 初版印刷
昭和56年9月20日 初版発行

p1 
 筆者が俳人小林一茶研究に入り始めてから、もうかれこれ五年になる。はじめの二年は一茶の文献等の蒐集に終り【ママ】、後の三ヶ年は現地取材の上、新聞に分載発表して来た。
 筆者と一茶との出会いを振り返ってみると、古くはもう四十有余年の昔の事だが、筆者が佐倉中学校(旧制)時代、国語の教科書により、平明な滑稽風刺の句と流離の境涯に感銘をうけたことを思いおこす。然し戦時下のため文弱ときめつける時代風潮のもとに忘れ去ってしまったようである。
 その後終戦、筆者は大学を卒業し、千葉県庁に奉職したが、西条八十主宰の詩誌「蝋人形」との出会いから詩人の群に身を投じ現在に至っているが、とんと俳人や俳句には無縁で過ごしてきた。
以下略


小林一茶と房総の俳人たち 目次
プロローグ
第一編 下総国編
江戸川に沿って
1 下総の挽歌
2 象徴の楼門
3 布施の蹴合い
4 豆引き月夜
5 雨だれ拍子の砧
6 行徳の手繰舟
利根川に沿って
1 松蔭に寝て喰らう
2 旅先から「ひぜん状」
3 平親王の御月夜
4 鯛鯉問答
5 人のなる木
6 露と答えよ合点か
7 余所の花見る花守
8 水盗人の行衛
9 青梅の蛙
10 届かぬさらば笠
京葉道路に沿って
1 八兵衛の句
2 千葉寺のむり笑い
3 比咩宮(ひめみや)の蝉
4 千葉余録
成田と印旛沼
1 佐倉の常夜灯
2 印旛の沼太郎
3 藪入りの成田道
銚子と水郷
1 梅の香取
2 俳諧の一大事
3 利根の雨
4 小見川の寒椿
5 東坡乗驢之図(とうばじょうろのず)
6 北総の風雲児
7 不手廻りの仕舞
8 国のとっぱづれ
9 一人前のむしろ
10 蛙の長者
11 口をとられた吉祥
12 万歳の鶯
13 鳩山騒動
14 夜の柱
第二編 上総国編
九十九里浜に沿って
1 阿須波の柴折
2 鹿野山の一里
3 筑波をまたぐ日和虹
国鉄内房線に沿って
1 亡き母への句
2 木更津の盗賊
3 猫のおくれ恋
4 あれの是の世
5 上総の蚊
6 一茶のあこがれびと
7 富津のみゝつ貝
8 いとしき人のむかし道
9 上総のそこ一里
10 大事の/\栖(すみか)
11 青稲の花
12 千両の商い
第三編
房総の南端
1 鋸山の霞の碑
2 五十年の桜
3 身の上の鐘
4 竜島の鳶
5 勝山の鯨見物
6 鴛鴦(えんおう)の一期
7 彼(か)は誰時(たれどき)の春心
8 念仏仲間の穀無尽(こくむじん)
9 逃げた一茶の噂
10 蝶を追う心
11 娑婆の役
エピローグ
付録
索引・年表・参考文献・後記

 布川・月船に釣られて手にするも、克明に追った一茶の足取りに惹かれて読了。布川でのエピソードは他の本と重複するものも。出典が同じであれば、当然。

p60
 古田月船は、一茶が没してから十年後、すなわち天保八丁酉年(一八三七)正月二十日没し、羽中村(利根町羽中)の羽竜山応順寺に葬られた。法名は「五水庵釈東淵月船居士」、寺に訪れてみると、「月船墓地」の立札があり、町の文化財に指定されている。
 子孫も絶え、家は絶家したらしいが、付近には「古田」の姓が多い。 かつては、高瀬舟で賑わった利根川も、堤防が視界をさえぎり、堤内には野放しの乳牛が、生い茂る野草を食むにまかせていた。

 かつては一茶と親交の深かった家も、現在は絶えてしまっているとのこと。屋敷跡は何処に。
 別の本に、月船の家のその後が記されていたはずなのですが、それがどれだったのか、見あたらず。