[NO.825] 〈郊外〉の誕生と死

kougainotanzyoutosi.jpg

〈郊外〉の誕生と死
小田光雄
青弓社
1997年9月30日 第1版第1刷発行

 出版者サイトに紹介あり。
 これまで読んできた本のジャンルからは異質な内容。社会学的な考察。

 「ロードサイドビジネス」というキーワードを元に、高度成長を遂げた社会を見直す作業をしています。アメリカではそうした変化が起きたのは1950年代。対する日本では1970年代だったのだとか。
 車で道路を走っていると、日本全国が同じような看板の店舗ばかり。生活様式も似たり寄ったり。そんな社会が生まれたのはなぜか。納得しました。
 過疎化、産業構造の変化、駅前シャッター商店街の出現まで、例を挙げて具体的に説明されており、わかりやすい。

 戦前からずっと続いてきた農村での暮らしが急激に変化を遂げてしまったのは誰しも指摘しているとおり。けれども、本書のように数字やグラフを掲げ、具体的に説明されると説得力が違ってきます。

 著者が通っていた田舎の小学校へ、偶然転校してきたのが山田詠美氏だったというのも不思議な縁。また、村上龍氏の『限りなく透明に近いブルー』の説明にも納得。

 なんといっても、この本が出版されたのが今から12年も前であることが驚き。先見の明とでもいうのでしょう。

目次
序 村から郊外へ
第1章 郊外の誕生
第2章 ロードサイドビジネスのある風景
第3章 アメリカ的風景の出現
第4章 郊外文学の発生
第5章 郊外の行方