[NO.809] 昭和恋々/あのころ、こんな暮らしがあった

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昭和恋々/あのころ、こんな暮らしがあった
山本夏彦久世光彦
清流出版
1998年11月20日 第1刷発行

 それぞれの項目につき、一葉の白黒写真と文章。お二方の年齢の開きにより、年代の開きも有り。
 対談を読むに、両氏の発言にみられるズレが面白し。互いに歩み寄らぬところに何とも味が。死語についての意見の相違など。

 本書の眼目は、それぞれの項目の立て方にあるのでしょう。既に目にすることができなくなってしまった内容。どれも山本氏が何度も繰り返し語り、書き残した内容ばかりです。なるほどと思ったのは、このところ関心を抱いている事柄は、大半がこれらの中に含まれていたということ。生活史。

 これらの項目について資料写真を集めたのでしょうが、新潟県、山形県だの長野県(ここが多かった)のものが入ってしまうというのは、既に入手が難しかったのでしょうか。できれば、お二人が目にしたであろう都内での写真が欲しかったところ。

 資料としての価値を離れると、情緒の含みを感じさせる分だけ久世氏の文章の方が読ませる気がします。というのも、久世氏による山本初彦評の中に、P3L4句読点が妙な文章」という表現を目にしたことが、妙に引っかかりました。なるほど、山本氏の文章を「句読点」に気をつけて読むと、「妙」と感じる箇所があります。そう評してもいいのか、と感じ入った次第。あれだけ文章について述べていた山本夏彦の文章も。

目次
はじめに 久世光彦
第一部 戦前を見に行く 山本夏彦
不忍池、下宿屋、アパート、髪床、質屋、田園調布、駄菓子屋、蕎麦屋、高島屋、汁粉屋「竹むら」
第二部 過ぎ行く季節の中で 久世光彦
【春】
産湯、割烹着、姫鏡台、入学式、大食堂、防空演習、予防接種、蓄音機、パーマネント、足踏みミシン、オルガン、下駄、柱時計、風車、路面電車
【夏】
虫干し、行水、ラジオ体操、麦わら帽子、紙芝居、蚊帳、綿飴、金魚売り、サインボール、花火、日傘、駄菓子屋、カフェー
【秋】
七五三、子守り、ブロマイド、原っぱ、物干し台、縁側、出前持ち、映画館、乳母車、七輪、路地、交通整理、似顔絵、羅宇屋
【冬】
障子洗い、風呂敷、堀ごたつ、虚無僧、夜警団、お正月、書き初め、福笑い、輪タク、質屋、汽車
第三部 対談●昭和恋々 記憶の中の風景 山本夏彦VS.久世光彦
あとがき 山本夏彦

初出誌
第一部 月刊『室内』平成10年1月号~10月号
第二部 月刊『清流』平成6年7月号~生成10年11月号

写真撮影者及び提供
藤塚光政、影山光洋、家の光、熊谷元一、毎日新聞社、石川光陽、菊池俊吉、共同通信社、桑原甲子雄、朝日新聞社、木村伊兵衛、和井田登、クロサワ