東京都/新風土記/岩波写真文庫201/復刻版 岩波写真文庫 川本三郎セレクション 岩波書店 2007年12月19日 第1刷発行 1956年9月25日 初版発行 |
巻頭を飾る川本氏の言葉を借りれば、この写真集は、当時の復興の明るさにあふれている。東京はここまで立ち直った。そしてこれからまだ発展してゆくだろうという希望が見える。昭和三十年代のはじめは、荒廃から立ち直った社会が、ようやく余裕を取り戻してきた、小春日和のような時代だった。
小春日和のような時代であった昭和32年当時の写真は、どれも郷愁を誘うものばかり。特にトップを飾る日本橋の写真を見ると、現在の悪名高き高速道路に覆われた様子との違いに驚かされます。いったい何を考えて、あのような建設をしたのでしょう。
p9「小岩付近、江戸川べりの低地」では家が一軒も見あたらず。p10「上野山下の広小路」に見る路面電車とビル、p12「新宿」の大ガード、p13「中野駅前」、どれをとっても戦前と変わらないのでは。
p32・33の「三菱ガ原(大正初年)」は秀逸。「左に東京駅の建物」という注意書きを読まなければ、まるで大連あたりと見間違えてしまいそう。空襲で焼けてしまった3階建てドームが見えます。
大正初年のころ。漱石、鴎外の時代風景は、もはやこうした情景自体が思い浮かばないことからも、遙か歴史の彼方へ消え去り古典と化してしまうのかもしれません。
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