下町/日本の名随筆別巻68 沢村貞子 編 作品社 1996年10月20日 第1刷印刷 1996年10月25日 第1刷発行 |
映画「男はつらいよ」あたりから変容してきた下町のとらえ方を払拭する選定28編。下町、大好きではなくとも、嫌いでもなし。散策するに、つい足を向けるところ。
作品社によるこのシリーズ、「日本の名随筆」は親切に目次が出版社サイトで用意されており、いつもはリンクで済ませるところを、こればかりは掲載させていただきます。沢村貞子さんの選定は、明治大正の文学に偏らない内容。
永六輔氏から始まるのは、ちょっと。森茉莉氏の「谷中清水町の家ほか二篇」も読後に違和感。しかし、まあ魅力あふれるものばかり。
【目次】
永六輔 肩身の狭い町
池波正太郎 東京の下町
永井荷風 百花園
木村荘八 両国今昔
鏑木清方 濱町にゐたころ
長谷川時雨 町の構成 『旧聞日本橋』より
丸山薫 江戸川べり風景
岡本綺堂 新旧東京雑題
永井龍男 わが寄席行灯
種村季弘 二階の話 古今亭志ん生『二階ぞめき』
池田彌三郎 下町の芸能風土
宇野信夫 稽古ごと
内田榮一 江戸前ということ
林家木久蔵 手焼きせんべい
佐多稲子 下町
芥川比呂志 私の浅草
野口冨士男 路地
幸田文 つきあたり
森茉莉 谷中清水町の家ほか二篇
小島政二郎 下町娘
唐十郎 昼下がりの主役 焼跡の紙芝居
中村喜春 古い日本のことも知ってほしい(抄)
野田宇太郎 たけくらべの町 下谷散策11
小沢信男 朝顔市とほおずき市
田島ふみ子 新富町かいわい(抄)
川本三郎 都営新宿線は、私だけの名所に
連れて行ってくれる 浜町、森下町、大島
早乙女勝元 私の下町
沢村貞子 私の浅草(抄
P34
「両国今昔」木村荘八
僕は須賀町で巻骨の三枚半以上の武者絵の凧を買ふことを好んでは、これに大形のウナリとガンギリを付けて、尻尾は三間たち切りと言ふのを確か大人に教はつたまゝいつもその定法通りとした。あたじけないことだが、この巻骨の気負ひの凧がその頃一円二十銭かで、何でも一式で、二円五十銭かゝつたおぼえがある。
「あたじけない」という言葉を活字で目にすることができました。
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