[NO.797] 「しるし」の百科

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「しるし」の百科
荒俣宏
河出書房新社
1994年10月15日 初版印刷
1994年10月25日 初版発行

 昭和63年に日本アイ・ビー・エム株式会社から刊行されたアクセス叢書4『標(しるし)の周辺』に加筆改訂したもの。

 濃い内容。豊富な図版を挙げ、こと細かに解説。

 ここに挙げられている具体例、その図版のなんとも魅力的なことといったら。

具体例の1
 P29 図14「マンボウとハリセンボンの関係」。荒俣氏は「安定した基本形と不安定な形との関係」として、イギリスのダーシー・トムソンの説を紹介している。マンボウとハリセンボンとでは、形がまったく似ていない。ところがハリセンボンを直交座標上に描き、縦軸は同心円状に、横軸は双曲線状に変形してみると、座標上のハリセンボンはマンボウとそっくりの形になるという。

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 このマンボウとハリセンボンの図版は魅力的。ところが、もっときれいな図版をアップしてあるサイトを発見。図版はサムネイルなので、拡大でき、説明も丁寧に掲載。ここ。リンクさせていただきました。

具体例の2
 P35星の形の印
古代世界に共通して印章などに用いられた星形の目印を並べてみよう。
 十字架あるいは卍(まんじ)と呼ぶ印であり、
 五芒星ともソロモンの封印ともいい、
 六芒星、ダビデの星、日本では籠目などと称する。
 これらはたがいに類似した印だが、元来は星というよりもむしろウニの棘(とげ)など「目に突きささる針」をあらわしていたようだ。これらの印は「目を突く」ものであって、文字どおり目印とよべるものである。
 博物学者南方熊楠によれば、このような目印が魔除けの護符としてひろく用いられたのも、まさしく「目だつ=目を突く」ことにあったという。古代人は、悪意を込めた目に睨まれると災いが降りかかると信じ、その元凶たる「邪視 vil eye」を恐れた。そこで、この邪視から逃れるために、星形の目印を敵にしめした。邪視の持ち主は思わずその印に目を奪われ棘の数を数えてしまう。目を読むのである。だから、目の数が多ければ多いほど遁れる機会が増すというので、五芒星、六芒星、さらに中国では「九字」という印が考案された。それはのような形をし、最大の数九に結びつけられている。ひとたび邪視のもち主がこれに目を奪われれば、注意を他のものに向けることがきわめて困難になるという。

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