「坊ちゃん」はなぜ市電の技術者になったか/日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎 小池滋 早川書房 2001年10月10日 初版印刷 2001年10月15日 初版発行 |
出版された当時、書評で話題になった本です。やっと読めました。
表題になった最初の内容が一番面白かったかな。中学生で読んだ昔から、その後の坊ちゃんが選んだ職業は気になっていました。もっとも「技手(ぎて)」というのは、てっきり運転手だとばかり思っていましたが、本当は監督する方の職種だったのですね。当時の物理学校が今の理科大だというのも有名な話でしたから知っていましたが、それでどうして運転手だったのか、ずっと疑問だったのが、ようやく解決しました。
『うらなり』(小林信彦著・文藝春秋社刊)を読み返してみたくなりました。
田山花袋の話は、そこそこ。荷風については思ったほどではなく、芥川も、へーえ。
銀河鉄道の地図は秀逸。巻末に関連した年表と索引が付いていたけれど、むしろ、参考文献を載せていただきたかったところです。きっと、鉄道に詳しい小池氏ならではの本をたくさんお持ちではないでしょうか。
目次
「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか/夏目漱石『坊っちゃん』
電車は東京市の交通をどのように一変させたか/田山花袋「少女病」
荷風は市電がお嫌いか/永井荷風『日和下駄』
どうして玉ノ井駅が二つもあったのか/永井荷風『■(「ぼく」旧字体)東綺譚』
田園を憂鬱にした汽車の音は何か/佐藤春夫『田園の憂鬱』
蜜柑はなぜ二等車の窓から投げられたか/芥川龍之介「蜜柑」
銀河鉄道は軽便鉄道であったのか/宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
なぜ特急列車が国府津に停ったのか/山本有三『波』
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