[NO.766] 利根川/移りゆく生活と風物/現代教養文庫373

tonegawa.jpg

利根川/移りゆく生活と風物/現代教養文庫373
飯島博 著
土田作 写真
昭和37年5月15日 初版第1刷発行
社会思想研究会出版部

 なんとも風変わり、おかしな本。利根川関連で読んだ中では異色の部類。出版年を考慮に入れると、1962年というのはそうそう古いとも思えず。なにしろ東京オリンピックを2年後に控え、高速道路や東海道新幹線の開業も迫っている頃なのですから。
 それにしても、白黒写真に収まっている当時の光景は戦前とあまり変わらないようなのんびりした農村ばかり。

 さて、一番驚いたのは下記の部分。
p232
 佐原の恐るべき寄生虫は日本住血吸虫や肝臓ジストマなどである。この辺では三〇%から五〇%弱の人が肝臓ジストマ(肝蛭ともいう)の虫卵を糞便に出している。
という記述には絶句。このあと、詳細なる病理学方面の説明が続くのです。詳しくは下記、アーカイブス1のリンク先へ。
 本書は、ここまでにも脱線する内容があり、それも面白いと読み進めてきたものの、あまりの内容に巻末の著者説明を読むと納得。お医者さんでした。

 本書は端的に紹介すると利根川を上流から河口の銚子までたどった紀行文です。たまたま記述の中、距離や方角に誤りに気がつきました。誤植なのかもしれないので、なんともいえず。

 著者は巻末に1907年一高を修了とあります。その一高時代、ボート部員として江戸川から関宿経由で銚子まで往復したのだそうです。冬場の恒例だったとのこと。詳しいはずです。
 最盛期だったはずの利根運河は使わなかったのですね。

目次【詳細は省略】
Ⅰ 奥利根を発して《上利根川急流部》
Ⅱ 板東大橋から栗橋へ《上利根川平流部》
Ⅲ 菅生沼から印旛沼へ《中利根川》
Ⅳ 佐原――銚子――太平洋《下利根川》
付 江戸川流域
利根川流域詳細地図

アーカイブス1へ