新版大東京案内 下/ちくま学芸文庫 今和次郎 編纂 筑摩書房 2001年11月7日 第1刷発行 |
下巻は「東京の郊外」から始まります。「あんな新開地は下町(あるいは山の手)とは呼べない」、という言い方があります。震災後とはいえ、本書でもそれらに類する内容が出てきます。当然、郊外電車の発展とともに宅地化されてゆく様子がわかります。
下巻の特徴は、細かく挙げられた当時の人々(それもあらゆる階層の)を具体的に分類し、紹介しているところでしょう。特殊街として挙げられているのは、書店街、古着屋街、十軒店、下宿街、学者町、大臣横丁、官邸街、山カン横丁、お妾横丁。十軒店は江戸名所図絵にありますが、山カン横丁などは時代背景から生まれたネーミングでしょう。すごい。
目次でその次の並びは「花柳街」。花柳総覧、恐慌時代、芸者稼業、各地一瞥、公娼四宿、私娼街。
出るべくして紹介されているのが同潤会アパート。リアルタイムでの紹介です。タイムトラベルしているみたいです。
「盛り場を根城とする不良群」や「細民の東京」などという分類もあります。地域の紹介から暮らしぶりまで。あるいは彼らの細かな分類も。乞食の収入の方が浮浪者などよりも安定しており、宿泊代を滞らせないなどという記述が目をひきました。
手作りの地図にも面白いものがあります。駿河台下に広がる「神田のカフェー飲食店の分布図」などというものも。そこに紹介されている店舗を列挙しますと、新本、古本、喫茶、カフェ、フルーツ、ミルク、パン、しる古、食堂、すし、そば、和食、洋食、支邦料理、かばやき、おでん、牛?。最期の牛に続く文字は判読できませんでした。これなど、ミニコミ誌で目にする地図と変わりません。
また、調査統計資料などの数字が頻出するのも特徴です。
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