スコープ少年の不思議な旅 文 巖谷國士 作品 桑原弘明 パロル舎 2005年12月1日 第1刷発行 |
『セルフビルド 自分で家を建てるということ』で紹介されていた桑原氏の世界。実に魅力的で不思議な本です。こんな世界があったことを知ることができただけで幸福。
どうして小さなものに惹かれるのだろうか、と考えています。PDAを集めていた数年前、知りあいの中古PC店のオヤジさんから、大きい人は小さなモノが好きな傾向がある、と言われたことがありました。なんのこっちゃ。
本書の中に繰り広げられている世界は、なんとも言葉で形容できない魅力があります。現実の世界からの逃避願望なのでしょうか。これを突き詰めていくと、グレッグ・イーガン氏によるバーチャル世界につながるのだろう、と想像をたくましくしています。
おやっと思ったのは、内部に展開される世界には人間や動物などの生物が一切登場していないこと。植物の姿は見られても、そこには動きがありません。完全 なる静謐な世界があるのみ。唯一、動きがあるのは噴水や滝による水の流れ。いくら目を凝らしても、そこには動く生命の姿がありません。むしろ、そうした生 物を拒否しています。不思議な世界。
さらに、面白いのは外観です。奥行きのあるとんでもない世界を内包しながら、その外側自体、なんとも小さな箱であるという矛盾。こんなモノが、この世に存在しているのだということを想像するだけで嬉しくなります。アーカイブス2へ
【追記】
本書の出版社 パロル舎 は、[NO.832] はじまりはいつも本/書評的対話 の パロル舎 と同じなんですよね? 残念ながら2011年に倒産してしまったパロル舎。
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