その時がきた 山本夏彦 新潮社 平成8年7月25日 発行 平成8年8月30日 2刷 |
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私の岩波物語
小著「私の岩波物語」(文藝春秋刊)が五月十日に出た。このなん十年岩波書店は忌憚なく論じられたためしがない。岩波は知識人の権威であり、難じることはタブーに近かった。
人は窮すれば何を売ってもいいが、正義だけは売ってはならぬと旧約聖書にある。岩波は正義と良心のかたまりで、半世紀以上これを売り続けて知識人をミスリードした。
もう一つ千年来の和文脈と漢文脈の伝統を、欧文の直訳体に近い岩波用語でほぼ完全に破壊した。国民をミスリードした岩波、国語のリズムの破壊者としての岩波を、私は女子供に分る言葉で論じた。異論があれば直ちに反駁(はんばく)できるように書いた。
まるで自著の宣伝ですが、著者の言っていることはいつも一貫しています。
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