すばる/2007年4月号 特集 21世紀ドストエフスキーがやってくる 集英社 |
大江健三郎氏による同名の著書『21世紀ドストエフスキーがやってくる』が出版されていたのですね。存じませんでした。
今回の雑誌「すばる」の特集を読んで、目を引かれたのは斎藤美奈子氏「『カラキョウ』超局所的読み比べ」でした。さすが斎藤氏。このタイトルを見ただけ では、最初に意味がピンときませんでした。なにしろ『カラキョウ』ですから。これが『カラマーゾフの兄弟』の短縮形だと気づいたときには笑ってしまいまし た。
2006年亀山郁夫氏による新訳が刊行されてたのを踏まえ、これまでに我が国で訳された『カラマーゾフの兄弟』を一覧表にまとめています。いやあ、相変わらずですね。
①一九一五(大四) 森田草平訳(日月杜)
②一九一七(大六) 米川正夫訳(新潮社)
③一九二〇(大九) 廣津和郎訳(冬夏社)
④一九二三(大一二) 北川劉吉訳(上方屋出版部)
⑤一九二七(昭二) 米川正夫訳(岩波書店)
⑧一九三六(昭二) 中山省三郎訳(三笠書房)
⑦一九六〇(昭三五) 小沼文彦訳(筑摩書房)
⑧一九六一(昭三六) 原久一郎訳(新潮社)
⑨一九六六(昭四一) 池田健太郎訳(中央公論社)
⑲一九六八(昭四三) 北垣信行訳(講談社)
⑪一九七一(昭四六) 原卓也訳(新潮社)
⑲一九七四(昭四九) 箕浦達二訳(旺文社)
⑬一九七九(昭五四) 江川卓訳(集英社。一九六四年にアプリジッド版が同社から出ている)
⑭二〇〇六年(平一八) 亀山郁夫訳(光文社)
次に惹かれたのが、青山南氏による「『地下室の手記』から」。アメリカでのドストエフスキーの読まれ方です。ジャック・ケルアックがセリーヌと並んでドストエフスキーを楽しく読んでいたというのは、へーえでした。アレン・ギンズバーグも好んでいたとか。そうしたビート・ジェネレーション(や学生)たちの間で流行していたドストエフスキーに水を差す意味あいとして、ウラジミール・ナボコフは例の有名な『ロシア文学講義』の中で、ドストエフスキーに対して批判的なのだそうです。ふーむです。
特集
21世紀
ドストエフスキーが
やってくる
対談
ドストエフスキーの
"新しい読み"の可能性
-ロシア・東欧文学をめぐって-
大江健三郎 沼野充義
インタビュー ボリス・アクーニン
メタテクストとしてのドストエフスキー
聞き手・構成 沼野恭子
トルストイとドストエフスキー
加賀乙彦
二〇〇六年の『罪と罰』
井桁貞義
さまざまな声のカーニバル
~ドストエフスキー研究と批評の流れを瞥見する
沼野充義
「赤い蜘蛛」と「子供」
斎藤環
『罪と罰』
~メディア・リテラシーの練習問題
番場俊
「厚い雑誌」の興亡
~一九世紀の雑誌読者
貝澤哉
ラテンアメリカ作家とドストエフスキー
野谷文昭
『地下室の手記』から
青山南
インドのスタヴローギン
中村和恵
『カラキョウ』超局所的読み比べ
斎藤美奈子
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