[NO.564] ブック・カーニヴァル

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ブック・カーニヴァル
高山宏
自由国民社
1995年7月1日 第1刷発行

 1198ページにもわたる厚み。中辞典クラスのボリュームです。自由国民社からというのも。
 ぱらぱらと目を通し出すと時間が経つのを忘れてしまいます。

 なんといっても本書の眼目は高山宏氏自身の手書き文書類(タカヤマ・コンポジション)が公開されていることでしょう。字を書くこと、ノートを取ること、原稿を書くこと、好きなのですねえ。
p44
門外不出、本邦初公開の「ビブリオ・マシーン」。70センチ厚の紙片の束に書に関して高山宏が必要とする情報の一切が累積される。冒頭の人名セクション(ABC順)。ある人物による、また彼、彼女に関する文字素材が小さな雑誌論文まで徹底的に網羅される。手書き文化、書写文化最後の華と高山は笑う。Tは東京都立大学に、KKは東大駒場(駒場研究室の略)に、HKは東大本郷に架蔵のマーク。

p269
大学内外のレクチャーや対談は、限られた時間が高山宏の情報量と、加えて「脱線」癖の敵となる。そこでいつの頃か「コンポジション」と称して、喋ったり、書いたりする内容を事前の10分くらいにダッシュアウト(さっさとメモ)する習慣が付いた。右図は「分析心理学と幼児教育」講演、上図は「塔の意味論」原稿のためのものだったと思う。

p272
典型的な対談用コンポジション。相手がプロの場合など、年表と観念連鎖をひと通りメモして、大体を頭に入れていく。対談に向かう途中の車中で走り書きすることも多い。これは『別冊太陽』田中優子氏と平賀源内のことを初めて語りあったときのメモと思う。「素人」丸だしが恥ずかしいようなものだが、あとはその場で自由に脱線すればいいだけの話なのである。対談後、相手にプレゼントする。



目次 CONTENTS

きみに告げる
祝祭開宴の口上
Carnival
松岡正剛 書物の食卓

I鬼市幽絶 日暮れてなお道遠し
高山、鬼の宝箱に魅人らるるの条 耽溺の宝庫、大学図書館五万冊の書物渉猟
ぼくの「大学」は、欧米の書評誌だった 「書物検索ノート」は高山宏の生命線
ぼくのロクス・クラシクス 古典としての六〇年代学
「知性の夏」にぼくは澁澤を読んだ 六〇年代知性論への俄な光
半覚醒の想像力が生み出す書物の連環 わが部屋をめぐる旅
辞書は通説・耽読(!)すべき書物である 語学習得秘話
ヘルメス、ザ・カード・メイカー すべては、ヴェンゲーロフから......
「バカ」の両極は〈時代〉に遅れる 「小説」と「言語学」にアピールする
糞ったれ!の近況 ぼんくら頭脳集団の怠惰さが、おれの貴重な時間を奪ってゆく
Carnival
荒俣宏 宏さんと一緒に
鹿島茂 卓越した問題集に解答はない
谷川渥 言葉のマタンゴ
沼野充義 日本のチジェフスキーとしての高山宏
小森陽一 迷宮の飛脚
越川芳明 〈悪魔〉の囁き
中居実 何が何でも『あしたのジョー』なのだ

Ⅱひと出会い、知も出会う
知識よ、もっと出会え エラノス・マインド
円環知の贈り物 ヒストリー・オヴ・アイディアズ
「出会い」の書、に出会う ロサリー・コーリーの仕事に思う
MIT爆発 インターフェイシャルな実験出版
Carniva
武田雅哉 本のウロボロス
伴田良輔 高山本の正しい読み方
浜口稔 とてもじれったい言語思想史研究
黒崎政男 狂気の博覧強記
大橋洋一 それを、ユートピア的視線と呼ぶ
菊池良生 知の第五君主国
矢代梓 膨大な執筆量の方程式
澤野雅樹 皿を離れたフォークは食卓を跨がる
富島美子 男性ヒステリー?
吉見俊哉 高山宏とスペクタクルの思想
高野一良 オセンチなイノシシ
楢崎寛 現代アメリカ小説とウィンドウズ
蒲永信美 大量の脚注と正確なリファレンスを
大瀧啓裕 新しい本と古い本
大澤正佳 〈高山病〉シンドローム
折島正司 知的蘇生の道標

Ⅲニュー・ヴイジュアリズム
カタログ・マニフェスト アーカイブから離れろ
十八世紀奇苑幻想 風景庭園はディズニー・ワールドの元祖?
二十世紀末(驚異)博物館への熱い思い入れ 荒俣宏『想像力博物館』
博覧する快楽 エクスポジション・カタログ・新時代
だれが美術の夏を殺したか 蘇えるマニエリスム 一九七七-一九九四
偏倚な博物誌 バルトルシャイティス『アベラシオン』
豪奢な幻想美術史 「プラーツ様式」の魅惑
美学的素養としての「冷めた熱狂」 谷川渥『表象の迷宮 マニエリスムからモダニズムへ』
ピクチャレスクに孕まれた「様式」志向 ワイリー・サイファー『ロココからキュピズムヘ』
書き換えられた絵画史 フーコーの『言葉と物』の影の下に
「正しく」歪められた目 パノフスキー『〈象徴形式〉としての遠近法』
Carniva
本橋哲也 シェイクスピアのバロック的想像力
早乙女忠 迷妄の森から失楽園へ
伊藤 誓 小説史の夢/夢の小説史
井野瀬久美素 世紀末の高山宏

Ⅳ60年代末へ/から華やぐ知識
鏡に映される20世紀 ジョン・J・マカルーン編『世界を映す鏡』
知性の〈夏〉の絢爛 ウィリアム・ウィルフォード『道化と笏杖』
愚者の知恵 ウォルター・カイザー『痴愚神礼讃者たち』
ノモスの腹に穴を穿つ ジャクソン・コープ『〈魔〉のドラマトゥルギー』
ついにへルメースが...... 山口昌男『道化の民俗学』
パフチーンの季節 黙殺から一転、アイドル的名声へ
パフチーン、いよいよ面白く 一九八〇~九〇年代
剽軽の王国 ポール・パロルスキー『とめどなく笑う』
リトアニア望郷の歌 バルトルシャイティス評伝
インテリゲンツィア・アナモルフォティカ バルトルシャイティス『アナモルフォーズ』
リフレクシヴ・シックスティーズ 由良君美氏に
パラドクス瀰漫 ロザリー・L・コーリー『パラドクシア・エピデミカ』
突飛な時代の突飛な証言 ロミ『突飛なるものの歴史』
時代を「リフレクト」する批評 リュシアン・デレンバッハ『鏡のレシ』
フーコー、跼蹐せず 「フーコーの十八世紀」
ノンセンス・ブームにちょっと警告 エリザベス・シューエル『ノンセンスの領域』の領域
「起源」消滅の季節 アンガス・フレッチャー『アレゴリー』
真言カバラ驚愕の浮上 ハロルド・ブルーム『カバラと批評』
ルネッサンスの「賢者」たちは彼の同時代人? ヤン・コット『シェイクスピア・カーニヴァル』
「アマチュール」の宇宙 コリン・ウィルソン『超オカルト』
Carniva
高田 衛 邪視・奇談・風土
服部幸雄 『黒に染める』の衝撃
中野美代子 ニューメラル・アイズ
南條竹則 デカダン、少年愛
須永朝彦 同時代のフロントランナー
高橋世職 卓的タクティクス
風間誠史 高山延長線上の近世日本文学

Ⅴ記号が集散し、情報が離合する
変換思想の近代 「普遍言語」と十七世紀ヨーロッパ
名前の薔薇 近代辞典異聞
「クロス」して「リファー」 二十世紀末にチェインバーズ『百科事典』を読む
埋められる近代文化史の盲点 『大英百科』補遺版に思う
言語の夢想者たちの異貌 ジェラール・ジュネット『ミモロジック』
不思議の国のアルス パオロ・ロッシ『普遍の鍵』周辺
「普遍言語」なる観念の生成と消長 ジェイムズ・ノウルソン『英仏普遍言語計画」
バロックと情報理論 ライプニッツのすすめ
またひとつアベラシオン ライプニッツ『プロトガエア』周辺
文化を救うトランスレーション ジョージ・スタイナー『バベル以後』
「だべるの塔」以後の躁挙 柳瀬尚紀訳『フィネガンズ・ウェイク I・Ⅱ』
ジョイス研究鳥瞰 Critical Collideorscape
「クイズ少年」たちは、無意味な知識に、なぜ情熱?
Carniva
種村季弘 ワット氏の歩み
田中優子 あいづちと笑い
古賀弘人 Signor Nostro Mostro.
上野美子 スピーキング・ピクチャー
山田登世子 Lettres lointaines
建石修志 スピード溢れるピクチャレスク・ワールド
四方田犬彦 ボローニヤより
西垣 通 パリからのたより
鈴木 晶 ロンドンより
北川健次 私信
阿部正記 私信
佐藤良明 私信
長野まゆみ 高山さんについてのひとこと

Ⅵやぶれさる探偵
ミステリーの開放系 推理小説とモダン、ポストモダン
頭がリゾーム ステファーノ・夕ーニ『やぶれさる探偵』
世界にもっと笑いのカタルシスを ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
『薔薇の名前』の時代 バスクァーレ・アッカード『シャーロック・ホームズが誤診する』
Carniva
安原顯 異才に熱望すること
二宮隆洋 レクトゥール/多学とリズール/博学
松田徹 タカヤマ病
小川康彦 高山さんの「物」
松村 豊 《書》という綺想主義
西館一郎 TH氏への私信
西田裕一 高山宏による「ご存じのように」
山本明子 その文体は「異端」の落語調
加藤郁美 カツコエーテス・スクリベディ
歌田明弘 「ジャンルの壁」が壊れる時
西口 徹 再建師、シユベールに現る
角田健司 想像力の立ち上がる瞬間
山内直樹 入間頭脳の恐るべき容量

Ⅶアリスを迫って
文学探偵たちの世界 『アリス』初版本の謎
言葉もまたテクノロジー 『アリス』への新しい着眼点
もっともっと知りたいキャロル われわれ世紀末のキャロルは予言者?
なんて素敵な言葉のお遊戯 『アリス』詳注本にのめりこむ
アリスの「世界」、新発見 『新注アリス2』解題
「もう一人」のキャロル像 ジョン・パドニー『アリスのいる風景』
市田炎子 カタログ・マニフェストの冒険
小森高朗 美術書コーナーは〈爆発〉するか
澤田陽子 オーラル・サーヴィスの達人
井上竜文 世紀末の百貨店、百貨店の世紀末
川添 裕 見世物研究の現在形
岩間洋介 モーツァルトを(発見〉する
小勝禮子 「ピクチャレスク」から「死にいたる美術」へ
大原哲夫 誠実なる人、高山宏さん
服部 滋 グリーナウェイよ!グリーナウェイよ!

Ⅷ博物曼陀羅と幻想万華鏡
ダス・イスト・ヴンダーバール! 幻想博物誌の現在
アニマのバロック劇場 荒俣宏『世界大博物図鑑』
アレゴリカル・アイ フランシス・ハクスリー『眼の世界劇場』
リヴレスクな博物誌 澁澤龍彦『私のプリ二ウス』
類推的想像力の革命的風景 バルトルシャイティス『アベラシオン』
二十世紀末にアラビアン・ナイト再訪 開巻驚奇、まさにアラベスク
奇態な〈オリエンタリズム〉観念 ドナルド・ラック「中国像の変容」
犀の書か、書の犀か ベルトルト・ラウファー『サイと一角獣』
ルナティックス、月に遊ぶ マージョリー・H・エコルソン『月世界への旅』
「へラクレイトス」の族 エレーヌ・テュゼ『宇宙と想像力』
永遠に新しいシュルレアリスムの実践 ミッシェル・カルージュ『独身者の機械』
モルフォロジーへの意志 磯田光一『人工庭園の秩序』
ドイツ・ロマン派一変 シオドア・ジオルコウスキー『ドイツ・ロマン派とその制度』
言薬の一大驚異博物館 ウンベルト・エーコ『フーコーの振り子』
物語を生む組み合せ術 イータロ・カルヴィーノ『宿命の交わる城』
虚実の皮膜 ドミニック・ノゲーズ周辺
乱歩の途方もない読み方 推理小説の構造そのものを問う、乱歩の暗号趣味
「みせれえにあす」のモダニズム 『新青年』復刻版に思う
奇譚またオブジュならむ 『澁澤龍彦綺譚集』I
「細部」の人の大射程 須永朝彦『日本幻想文学史』
マニエリストの気象学 長野まゆみ『少年アリス』
カタンドール、人形史の終り 天野可淡鎮魂
測量棒を持った少年 建石修志「庭の気象」展
手に帰れ 古郡弘「イナンナ」展
饐える花と空の空 荒木経惟『近景/空景』
プラハ・リヴァイヴァル ヤン・シュワンクルマイエル作品集・ヴィデオ
Carniva
大橋健三郎 「円環」から「唯物」まで
高橋康也 ある青年
田辺秀樹 イチケンの高山君
百川敬仁 いい勝負なのかもしれない
土岐恒二 「都立の英文」と高山宏
鈴木建三 高山宏の思い出
浜名恵美 きみにふさわしい華を求めて
原 研二 前のめりの夏
光延明洋 太刀打ちできるのは恐らく
小池 滋 レゲンダ・タカヤマーナ

Ⅸ文化史、世紀末
魔の眼が魅す メスメールの世紀
人体の「気象学」へ バーバラ・スタフォードの驚異の書『ボディ・クリティシズム』
アール・ヌーヴオーの深層心理学 工芸家エミール・ガレの世紀末
正しい顔 脳局在論のイデオロギー
エフェメラの魅惑都市 ジュディス・ウェクスラー『人間喜劇』
金と文学 レイチェル・ボウルピー『ちょっと見るだけ』
新歴史派の憑霊文化論 テリー・キャッスル「ファンタスマゴリア」解題
独身者の機械 土屋恵一郎『ベンサムという男』『独身者の思想史』
あなたの知らない世紀末 「読む」習慣は世紀末に始まった
世紀末スキン・ゲーム 『テクスト世紀末』より

「世紀末」と性イデオロギー ジョセフ・ケストナー『神話と女ぎらい』
本当は手ごわいフェミニズム プラム・ダイクストラ『倒錯の偶像』
彼女の死体を超えて 谷田博幸『ロセッティ』
競売場としての近代 ブライアン・リアマウント『オークションの社会史』
「バロック」今また脚光 ヴェルフリンによる「再発見」を起点に
ネオ・バロック 胎動する混淆の冒険、新たなる認識への息吹
「産業の詩学」出発 鹿島茂『絶景、パリ万国博覧会』
黄金時代としての「十九世紀末」 現代の記号文化の快楽と不安
スキャンダル事件としての言葉 パニッツァの文学の「毒」を端緒に
世紀末とデパートの魅惑 エレイン・S・エイベルソン『淑女が盗みにはしるとき』
世紀末断章 一九九二年の視点
過去の未来 時間の文学をめぐる面白い本
明治三十年のシャンディズム 漱石ブームにひとこと
息を呑む「連想の花弁」 松田修『日本的聖性の機械学』
漫画の記号論的読みの、逆説的独創性 四方田犬彦『漫画原論』
ウンチは日常的である 「鳥山明の世界」
マンガは空前のメディアである 空前絶後の読者数と未開発の批評分野
「サザエさん」の新鮮な問いかけ 長谷川町子さんに感謝
ぼくが愛した少年少女マンガ 猛烈な〝日常〟がそこに甦える
巽 孝之 テクノゴシック世紀末
隠岐由紀子 学生時代から彼は......
門脇由紀子 私のなかの「由良ゼミ」
遠藤知巳 如是我聞‥由良先生のこと
木村建哉 奇天烈にして正統派の授業
田尻芳樹 由良君美先生と横光利一
風間賢二 実にコワイ! 本当にコワイ?
小谷真理 そのうちツーショット
藤原義也 魔の眼に魅されて
大野由美子 「高山宏」あるいは「想像力の旅」
岡本久一 数倍の人生を生きる男
内城育子 「火の手」より
小野寺由起 T氏、そして、ありす......
吉村明彦 あおぎみる高山
河田寛人 「教師」高山パフォーマンスに酔う
秋元佐恵 真夏のオペラ
千葉康樹 「先生が無人島に行くとしたら......」
池田 茂 セミナー「世紀末、起るアリス」
加賀野井秀一 ミシュレと『海』と戦艦シュぺー号

Ⅹ並べるの、好きツ!
高山独自編纂『世界の物語体系・全50巻』御披露目の儀
古典再読・高山流
英国幻想文学必読リスト
幻想文学必読リスト
わが生涯の百愛読書
泣きじゃくるベスト・テン+2の自伝
Carniva
浜口稔 西洋表象目録
高柳誠 螺旋系の肖像
山口昌男 悪ガキの悪あ書き

タカヤマ・コンポジション
ポスト・スクリプト、ポスト・フェストゥム

初出一覧
索引

章扉写真◎マツウラ ブンセイ