歴史の陰に時計あり!! 織田一朗 グリーンアロー出版 平成10年9月20日 第1刷発行 |
以前に読んだ『時計の針はなぜ右回りなのか』も、おかしな本でしたが、本書もピンときませんでした。いわゆる時計にまつわるエピソードを集めた本とでも呼べばいいのでしょうか。
p218
あとがき
この本の最終段階に差しかかっているところでイタリアへ出掛けたのだが、たまたまベネチアのサンマルコ寺院の大広間で文字板の針が左回り(反時計回り) の時計にでくわした。ガイドの説明がなければ、左回りとは考えなかっただろう。『時計の針はなぜ右回りなのか』の著書を刊行した著者にとっては、心中穏や かならぬ事態である。現在は止まったままでもあり、最初は「本当かな」と半信半疑だったのだが、アワーマーカーのローマ数字をよくみると、確かに左回りに 並んでいる。しかも、ひとつだけではなく、目にしただけでも三つはあったことからも、単なる偶然ではなく、明らかに意図して左回りにしたものだろう。現地 イタリア人ガイドの説明によれば、「当時は天動説が唱えられていたため」とのことだったが、納得は行かない。
地面に対して垂直に、建物の壁面に日時計を作る(ヨーロッパには多い)と、時計の影は左回りに回ることから、それを受け継いで左回りの機械時計を作った のではないかと推察した。だが、史実を知りたい。さらに、いつ、どうしてこの地方の時計造りが右回りの時計に呑みこまれでしまったのかも分からない。興味 深い発見だったのだが、スケジュールの都合でその日のうちにベネチアを離れなければならなかったので、調査が出来なかった。これから時間をかけて調べてみ たいと思っている。
今回、例は思いついても、調査が進まなかった時計がいくつかある。一つは、昭和天皇がされていたミッキーマウスのウオッチだ。記憶によれば、「ある日、 たまたま新聞社のカメラマンが晩年の昭和天皇を撮影した際に、袖口に気になる部分を発見し、この部分を大きく引き伸ばして見たところ、何とミッキーマウス のキャラクターウオッチだったということで、大々的な記事になった」。いつも、身の回りを″公式〟で固めて国民の前に現われる天皇陛下の″シッポ〟が見え たようで興味深かった。しかも天皇陛下からは想像も出来ないミッキーマウスのキャラクターウオッチというのが微笑ましい。誰かご一族のお子さんか、海外か らの来訪者からでも贈られたものなのだろうか。あるいは、昭和天皇はミッキーマウスの″隠れ〟ファンだったのだろうか。それとも、このように発見され、話 題になることを想定して、ユーモアを仕組まれたのだろうか。ユーモアの割りには、昭和天皇のイメージとは掛け離れていて、ミスマッチである。やはり、″ うっかり〟の出来事と解釈する方が自然だ。
しかし、あれだけ付き人が厳重にチェックしていながらも、〝見逃して〟しまったというのは不思議な気さえする。想像するに、天皇陛下の持ち物は、すべて 付き人が台帳にでも控えて保管していて(本著『国産品愛用運動に一役かわれた昭和天皇』の頁参照)、着用の際もチェックし、何人もが遠くから、近くから チェックしているのではないかと思っている。にもかかわらず、見逃されてしまったというのはおかしな気さえする。それとも、左の手首だけは、趣味を通せる 場所として天皇陛下個人に許された場所なのだろうか。腕時計は「個人のアンデンティティの表現」といわれているように、自分の意思、個性の表現とするなら ば、天皇陛下においてもそうあって欲しいものだ。しかしながら、どう考えても昭和天皇のあの年代で外国のキャラクターに親しまれるというのは不自然だ。調 べて見れば、何らかの理由がありそうである。そして、それは国民も知らない歴史の事実に関係している出来事なのかも知れない。
以下略
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