[NO.457] ヴィデオで見る近代文学選

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ヴィデオで見る近代文学選
高木徹編・著
白地社
1999年4月25日 初版第1刷発行

 てっきり大学の教科書かと思いました。どうやらそうではなさそうです。

はじめに
 日本の近代文学を教えていると、文学史に登場する作家や作品名はよく知っているのに、実際の作品はほとんど読んでいない学生が多いのに気づかされる。受 験勉強の影響であろうが、それを嘆いていても始まらないので、一つでも多く近代・現代の小説に触れてもらうにはどうしたらいいかと考え、近代文学に特に関 心を持っていなくても興味がわくようにと、映画化された小説ばかりを並べてこの本を編んだ。
 映画を見てから原作に関心を持ち、読んでみるということも勿論あるだろうが、できれば先に原作の小説の方を読んでいただきたい。映画監督も原作を読んで 得たイメージを映画にしているはずである。我々もまず原作を読んで自分のイメージをふくらませ、その後で映画を見てみよう。原作から受けるイメージと映画 との間には何らかのズレがあるかもしれないが、そのズレをも楽しんでほしい。そして、どうしてそのズレが生じたか、もう一度原作の小説を手にして考えてい ただければ幸いである。小説を読み、映画を見て、もう一度小説について考える、そういう方の手助けになるように解説を書いたつもりである。
 明治から昭和までの小説の中から十二の作品を取り上げた。作品を選ぶにあたって、小説については文庫本で入手できること、映画についてはある程度鑑賞に 堪える作品でありヴィデオが販売されていること、という条件を満たすものの中から考えた(但し、十二作品決定後にヴィデオの発売が中止されたものもあ る)。頁数の都合で、明治文学は鴎外・鏡花・漱石の三人に限り、島崎藤村の『破戒』などは外さざるを得なかった。大正文学は龍之介だけである。その代わり 昭和文学については、かなり多様な作家を採ることができたが、適当なヴィデオがないため三島由紀夫や大江健三郎を載せられなかったのが残念である。
 また十二の映画について、同じ監督の作品が重ならないように配慮した。例えば、今村昌平監督では「黒い雨」を採って「楢山節考」を外し、熊井啓監督では「ひかりごけ」を採って「海と毒薬」を外した。
 十二作品の中、全文が掲載されているのは『外科室』と『薮の中』だけである。その他の作品については、各自で本を手に入れて読んでいただきたい。文庫本とヴィデオに関するデータは、各作品のところに記しておいた。
 なお、『薮の中』「羅生門」を除いて小説と映画が同名であるため、両者を区別するために、小説は『 』で表示し、映画は「 」で表示してある。
 本書をまとめるに際して、内浦亨氏のお世話になった。この場を借りて、お礼申し上げたい。
  一九九九年三月
                   高木 徹


 『外科室』は監督が坂東玉三郎。もっとも1979年『夜叉ヶ池』を監督していたし、映画『帝都物語』では、そのものずばり泉鏡花役で出演していました。
 『ひかりごけ』って、1992年に映画化されていたのですねえ。忘れていました。熊井啓監督、校長・船長役は三國連太郎、西川役が奥田瑛二。
 取り上げられた映画、1980年代以降のものが予想以上に多かった気がしました。それにしても、いわゆる文芸ものの映画なんて、レンタル業界では、どれだけ流通しているのでしょうか。