田沼武能写真集 戦後の子供たち 著者 田沼武能 新潮社 平成7年1月25日 発行 |
いかにも、といった企画・編集が泣かせます。1ページ目が千葉県木更津の小学校3年生が書いた詩からはじまります。次のページには「田沼さんの写真」というタイトルで、 永六輔氏による序文。あまりにもパターンにはまった流れ。出版当時、マスコミでは茶化されていなかったのか気になってしまいました。(たとえばタモリとかが俎上にあげそうです。)企画者は、どなただっ たのでしょう?
収録写真は、1949年~1964年までの期間、東京を中心に北海道から九州までの全国の範囲。対象は東京の戦災孤児から地方の過疎の村まで。次第に豊かになってきた東京の様子と対照的に地方では変わらない暮らし。
子供たちが目を輝かせて熱中している写真が目を引きました。
裸足で歩道に立つ戦災孤児のキャプション「ペコちゃん人形の持つミルキーがほしくてしようがない戦災孤児(東京・銀座 1950)」などはインパクトがあります。「上野公園にて(東京・台東区 1951)」の下駄ばきの男の子は顔がひどくすすけています。「真剣な顔で物語のゆくえを見守る(東京・佃島 1955)」の子どもたちの瞳は、自転車の荷台にある紙芝居にくぎ付けです。
東京つづきでもう少し。「市ヶ谷の外堀でザリガニとり(東京・飯田橋 1963)」になると少年の髪型と衣服が小ざっぱりしてきます。が、やっているのは外堀で大きなザリガニをつまんでいるところ。背景に写っているのは『新英和中辞典』版元の研究社、二階建ての建物でしょう。もっと驚くのは「弁慶掘りで魚とり(東京・赤坂 1964)」です。東京オリンピックの年、4人の半ズボン小学生が魚とりをしています。これって、「弁慶フィッシングクラブ」として今も残っています。周囲の様子はまるで違ってますが。
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