馬車が買いたい!/19世紀パリ・イマジネール 鹿島茂 白水社 1990年7月20日 第1刷発行 1996年6月25日 第5刷発行 |
鹿島茂氏の代表作を今ごろになって読んでいるのは遅すぎでした。せめて古書蒐集シリーズより先に読むべきでした。聞きしにまさる名著。バルザック、フロベール、ユ ゴー、スタンダール。彼等19世紀フランスを代表する作家たちの小説に登場する馬車。日本とは根本的に馬車のとらえ方が違っています。なにしろ日本では、 身分の高い方をケダモノなんぞに運ばせることは、とんでもない! と認識していたのですから。
馬車の歴史、種類から街道の発達等、具体的です。当時の金銭からの考察も興味津々。若者が馬車に憧れる様子が納得。図版も豊富。
p192~ 書評で取り上げられ有名な記述。「二輪馬車(キャブリオレ)が三万フラン(三千万円)出しても買えそうにない」。
p202~ 「馬車による階級識別法」も吹き出しそうになりました。日本で流通している車種、車名を具体的に比較。クラウン、セドリック、セルシオ、コ ロナ......。さらにリンカーン・コンチネンタルやロールスロイス。19世紀の人々にとって、馬車がどのようなステイタスをもっていたのかを、現在の自動車の 車種と比較してくれます。具体的な金額も面白い。
扉裏の二輪、四輪馬車、種類別図がいいです。まさに馬車のカタログ。
鹿島氏も車を運転したはずです。若いころ、フランス国内をレンタカーのシビックで乗り回し、古書蒐集した文章もありました。やっぱり視点が面白い。
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