永井荷風の愛した東京下町/荷風流独り歩きの楽しみ /文学歴史6/JTBキャンブックス 監修 近藤富枝 編 文芸散策の会 発行所 JTB 1996 |
以前、この「JTBキャンブックス」シリーズで「熊野古道を歩く」を読み、その詳細な内容に驚いたことを思い出しました。何しろ宿泊施設から山中でトイ レの場所まで記述されていたのですから。本書ではさすがに宿泊場所は書かれていませんでしたが、前ページにわたりカラー写真が掲載され、ページをめくるの か楽しくて仕方がありませんでした。きっと、編集の上でレイアウトがよいのでしょう。
戦後、散歩する荷風散人の写真が多数見られます。そういえば、浅草橋のホームで小林信彦氏が荷風を見かけたということを、場所を変えて何度も書かれてい ました。浅草寺境内のベンチで居眠りする荷風の写真は、なんともいえません。できれば、戦前に散歩する写真を見たいものです。また、荷風の文房具や持ち物 の写真も戦後のものばかりです。戦災で焼け出されてから、それまでと打ってかわって、持ち物などにもこだわらなくなったとあります。何とか、偏奇館時代の 室内等を写した写真はないものでしょうか。銀座鳩居堂で、気に入った筆を一度に50本買っていたのだそうですから。
本書を読んでいてあらためて気づいたこととして、荷風の長命だったことがあります。25年間住み慣れた偏奇館を焼け出されたのは66歳。市川で新居を建 てて引っ越したのが77歳。本書でも何度も指摘されていることに、荷風がよく歩いたことがあります。亡くなる直前まで出歩いていたのです。
そういえば、アリゾナが再び店を開けたとありました。'96年の記述ですが。
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