唯臓論 後藤仁敏 風人社 1999年11月1日 初版発行 |
[NO.355] 『よろしく青空』中野翠著にあったので、早速読みました。面白く読みました。養老孟司氏の「唯脳論」に対して考えたのが、この「唯臓論」という概念だそうです。もっとも、あとがきによれば、恩師の井尻正二氏は「唯臓論」よりも「無脳論」がよい、とおっしゃったとか。
本書の中身は、三木成夫氏の人体観・人間観を自分なりに「唯臓論」という主張のもとに展開したものである、と述べています。前書きには、「そこで、唯脳 論に対抗して、「唯臓論」を提唱することにした。これは、人間の活動をすべて脳の機能から説明しようとする「唯脳論」の立場ではなく、人の活動をすべて内 臓の機能から説明しようとする試みである。」とあります。
三木成夫氏とはどういう方か。ここが一番面白いところです。
本書で一番興味深かったのは、p54「顔の由来」でした。ここで書かれている内容が、具体的に説明されているのは[NO.369] 『胎児の世界/人類の生命記憶/中公新書691』三木成夫著です。
「顔の発生に刻まれた進化」として、「じつに、ヒトの胎児は、受胎三二日からわずか一週間のあいだに、五億年におよぶ脊椎動物の進化の歴史を象徴的にドラマチックに再現してみせるのである。」
ここに掲げられている、三木氏スケッチによる胎児顔面4枚には、思わず言葉を失ってしまいます。ここから、ドグラ・マグラの世界までは、ほとんど紙一重です。
さらに、不思議だったのは、著者の経歴でした。巻末から引用します。「1946 年、愛知県生まれ。69年、東京教育大学理学部地学科地質学鉱物学専攻卒業。71年、同大学院修士課程修了。72年、東京医科歯科大学歯学部口腔解剖学教 室助手。75年、鶴見大学歯学部解剖学教室講師。80年、同教室助教授。口腔解剖学・脊椎動物古生物学専攻。理学修士・歯学博士。」以下略
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