[NO.362] 厄除け詩集

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厄除け詩集
井伏鱒二
筑摩書房
1977年7月21日 第1刷発行
1989年4月15日 第5刷発行

 改訂版だそうです。初版は昭和27年木馬社でしょうか。

p107
後記
 これは以前に出した「厄よけ詩集」の改訂版である。もとの本にはずゐぶん誤植があつた。今度それを直し、そのほか氣になるものや消したいものは取除い た。消した穴埋めには、後に書いたものや思ひ出したものを付加へた。「厄よけ」は「厄除け」とした。私としては自分の厄除札の代りにしたいつもりである。
 昭和五十二年六月
                    井伏鱒二


 誤植を直すのなら理解できますが、「そのほか氣になるものや消したいものは取除いた」というのは、どうなんでしょうか。そういえば、作者自身が1985 年に「山椒魚」の末尾を削除してしまった、というできごともありました。この『厄除け詩集』の改訂については、どのようになっているのか気になります。旧 版と改訂版とを比較された方もいらっしゃることでしょう。
 詩集の題名自体、『厄よけ詩集』→『厄除け詩集』と変更されていたことさえ、今まで気にもとめませんでした。

 北村薫氏が NO.341『続・詩歌の待ち伏せ』で指摘していたことですが、奥平卓氏の『唐代の詩/中国の古典文学5』では、李白「長干行」中にある「」の訳に触れ、これまで通説であった「寝台」というのを「井戸」と訳せるといいます。そこから敷衍して、李白の有名な「静夜思」でも、アノ「牀前看月光」は「寝台」ではなく「井戸」のあたりから見た景色であるとのことでした。これには驚きました。この有名な井伏氏の訳では「ネマ(寝間)」です。

 松下緑『サヨナラダケガ人生カ』集英社という本も面白そうです。