[NO.295] もし僕らのことばがウィスキーであったなら

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もし僕らのことばがウィスキーであったなら
村上春樹
平凡社
1999年12月15日 初版第1刷発行

 「ずるいなあ、村上さん」と思わず呼びかけたくなるような本でした。かつて、「主人公の若者たちがプール一つ分のビールを飲んだ」という小説でデビューしました。それが今ではシングルモルトの故郷探訪記ですか。
 などと、やっかみめいたことを思ったのは、「そろそろビールよりもウィスキーの方が体にはいいのかなあ」、などと思いながらもつい肝臓や血液成分のなんとかかんとかの値なんぞが気になってしまうという、こちらの個人的な事情からかもしれません。著者である村上氏の方ではいっこうにそんなことには気にもせず、相変わらずおいしそうに呑んでいます。もっとも、この著者は今でもランニングを欠かさず行っているのではないでしょうか。村上氏には、脂肪値を気にするなんぞということは縁遠いような気がします。

 奥さまが写したというスコットランド地方の島やアイルランドの写真は、どれも美しい景色ばかりです。特に表紙カバー写真にもなった右下の写真、そこに写っているのは、まるで『羊をめぐる......』いや、止めておきましょう。
 体裁は旅行記ですが、ウィスキーの味をたとえるのにジャズを用いたりして、思いっきりスノッブな内容でした。変わりませんね、1980年頃雑誌ブルータスに取り上げられていた頃と。

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