[NO.1669] ジジイの昭和絵日記

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ジジイの昭和絵日記
沢野ひとし
文藝春秋
2025年04月30日 第1刷発行
294頁

ジジイ三部作(『ジジイの片づけ』『ジジイの台所』『ジジイの文房具』)を読んでいると、最新刊『ジジイの昭和絵日記』が出ていたではないか。(ちょっと昭和軽薄台風。)っということで読んでみることに。

P.295(「あとがき」から)
 この『ジジイの昭和絵日記』は兄の戦後の昭和史かもしれない。
 過ぎてきた時代を振り返ると、精一杯張り切り仕事をし、目一杯遊んできた時が一番幸せだったと感じる。私にとって昭和はまさにそんな時代であった。

ちなみに「はじめに」では、本書について、そして兄について以下のように紹介しています。

P.2
 一九四四(昭和十九)年、終戦の前年に生まれた私は、戦後と供に生きてきた。この本は、戦後の昭和、平成に入るまでの記憶をたどったものである。
(略)
一九五六(昭和三一)年の小学六年生の夏に高校生になった兄に連れられて奥多摩の山小屋に泊まった。

これまでにも両親について、子ども時代の引っ越しについて、カントリー音楽について、奥様とのなれそめについて、こぐま社時代について、「本の雑誌」創刊のころについてなどなど読んできました。が、どうも今ひとつ理解しにくかったのがバブル期(こぐま社退職後、独立してからの)具体的な生活でした。ずいぶん金回りのいい話がでてきたりしたこともあったけれど、具体的にはぼやかされていましたし。本書では(ある程度)具体的に説明されていました。イラストと雑文で生計をたてていたのだろうなということくらいしか、わからなかったのが、はじめての仕事部屋はどこに持ったのか。その後どこへ移転したのかなんて、知りませんでした。なんだかんだと、やっぱりバブル期の恩恵に......。奥様は再就職していたのですね。

いずれにしても、独立後はこんな生活だったんだなとなんとなく思い浮かべることができたかな。もやっとしたイメージですが。

不思議に思っていたのが、ネットで目にする大学中退という記述でした。でどころはwikiの「沢野ひとし」の項のようではないでしょうかね。リンク、こちら

法政大学に進学するが中退[1]。

とあります。出典は[1]『現代日本人名録2002』1巻p1433 だそうです。これって日外アソシエーツのあのお高いやつでしょうね。

P.132
 一九六九(昭和四十四)年に早稲田大学の近くにある、絵本専門の出版社に入社した。浪人と留年を経験した学生を採用してくれた会社に深く恩を感じた。

とあるのみ。本書でも、留年のことにはふれられていません。

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「ブックウォーカー」ってすごい。(文春e-Books)として冒頭から28ページを読むことができます。目次もしっかり含まれているので、転記しなくて済みました。リンク、こちら

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【重箱の隅つつくの助】
文藝春秋社の校正部がかかわっていたであろうに、どうしてこうなったのかしばらく立ち止まって考えてしまったのが、次のところです。

P.287
 「オヤッ」と強く思ったのは、毎年の両親の墓参りの時である。家族が集まると、兄だけ顔色が悪く、昔の精細はまるでなく、足取りもふらついていた会うたびに身分不相応な高級車に乗ってくるのも気になっていた。

正しくは〈足取りもふらついていた〉ですよね。句点「。」が忘れられていませんか。

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