土偶を読むを読む 編者 望月昭秀(縄文ZINE) 執筆者(五〇音順) 金子昭彦/小久保拓也/佐々木由香/菅豊/白鳥兄弟/松井実/望月昭秀/山田康弘/山科哲/吉田泰幸 2023年(令和5)年04月28日 第1版第1刷発行 431頁 |
縄文ZINE_note から引用 リンク、こちら
『土偶を読む』の著者である竹倉さんに討論会の打診をした件について。
『土偶を読むを読む』の内容を超簡単に言えば、「『土偶を読む』での論証は皆目見当違いで破綻しているし、縄文研究ってもっと全然深くて面白いよ」という内容です。
書籍『土偶を読む』の提案を検証しています。『土偶を読む』を先に読んでいなくても、おもしろく読めました。
最近まで、『土偶を読む』騒動について、まったく知りませんでした。いやはや、そんなことがあったとは。本書が出版されてからでも、すでに2年が経過しています。知らないということは恐ろしい。
本書を読み終わった後、すぐに『土偶を読む』も読みましたが、なんともいいようのない後味が残りました。ここ数年で起きている日米の選挙と政治がらみの顛末(いや、現在進行中だ)のことを思い浮かべたり。
本書によって、すでに『土偶を読む』の検証と反論は終えています。
◆X(旧Twitter)
いとうせいこう
@seikoito
『土偶を読むを読む』(文学通信)、面白くて読み始めたら止まらない。『読むを読むを読む』があれば絶対また読みたいけど、隙がアリ一匹通るほどもなさそうな......。
午後7:54・2023年5月13日・6万件の表示
◆note・縄文ZINE_note リンク、こちら
260 件以上の高評価・1 年前
いとうせいこうさんは中日新聞の取材で本書に対して「ぐうの音も出ない、素晴らしい反論書だ」とコメントしている。
ところが、『土偶を読む』の内容は間違っていました、だけでは終わることのできない問題を生じさせていました。
縄文ZINE_note には詳細な経緯を踏まえた記事がアップされていますが、ここでは webちくま(筑摩書房の読みものサイト)の方を紹介します。リンク、こちら
21年11月、『土偶を読む』はサントリー学芸賞を受賞した。このへんで私も「あれあれ?」とは思ったのだが、『土偶を読むを読む』によると、問題はそれだけではなかったらしい。出版当日に放送されたNHKの情報番組や著名な知識人(養老孟司、鹿島茂、中島岳志、いとうせいこう、松岡正剛ら)の後押しもあってこの本は過大に評価され、22年にはビジュアル版に相当する子ども向けの『土偶を読む図鑑』(小学館)まで出版された。
奇想が売りに見えた『土偶を読む』はあれよあれよという間に知識人や教育界の「お墨付き」を得てしまったわけである。いったい何が問題だったのか。
斎藤さんは『土偶を読む』の間違いのほかに次の点を挙げる。
望月チームがカチンときた理由のひとつは、竹倉が既存の考古学に対して必要以上に敵対的だった点かもしれない。
挑発を超えて「敵対的」とまでいっているところがポイントです。
さらに追い打ちをかけたのがサントリー学芸賞選考委員佐伯順子さん(同志社大学教授)の選評にある
この新説を疑問視する「専門家」もいるかもしれない。しかし、「専門家」という鎧をまとった人々のいうことは時にあてにならず、「これは〇〇学ではない」と批判する"研究者"ほど、その「○○学」さえ怪しいのが相場である。「専門知」への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている。
のくだりでしょう。リンク、こちら
〈"研究者"ほど、その「○○学」さえ怪しいのが相場である。「専門知」への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている。〉
佐伯順子さんは翌年から選考委員からはずれました。産経新聞のネット記事によれば、
2024/2/11 10:00 昨春から研究のため英国滞在。
なのだそうです。まるでドラマみたいな展開。リンク、こちら つまり、『土偶を読むを読む』が刊行された2023年春には英国。
さらにここか先らは私見ですが、教育の分野へ進出しようとする意図を感じられるところも望月チームがカチンときた理由のひとつでしょう。いやカチンどころが、危機感を感じたと言いかえた方がいいかもしれません。具体的には斎藤美奈子さんも触れていた
『土偶を読む』P.323
今後の考古研究によって私の仮説が追試的に検証され、遠くないうちに「定説」(略)として社会的に承認されることを私は望んでいる。そうなれば、いずれ学校教科書の記述も改められるだろう。
のところ。学校教科書を持ち出してきたところで、どきっとしました。
さらに子ども向けの『土偶を読む図鑑』(小学館)が全国学校図書館協議会選定図書に選ばれたことが追い打ちをかけます。
このまま黙って見過ごすわけにはいかないと考えざるを得なくなったのが、本書出版の理由でした。こんな手間暇のかかるだけの仕事(検証・反論)を「雪かき」に喩えます。
ほかにも、NHK総合「あはよう日本」の「土曜特集」で、縄文時代の土偶の新しい説として紹介され、考古学者で土偶研究者、文化庁の主任文化財調査官の原田昌幸さんより「従来の考古学になかった発想で新たな学問形態の提案」というコメントが寄せられましたが、原田さんによれば、コメントは「私の意図とは全く違う切り取り方をされてしまったのだとあります。原田さん本来の発言は
本書P.34
これは個人の思いつきに近いもので、学術的には見るところはない。しかし、従来の考古学にはなかった視点で興味深いですね。
なんだかなあ、です。
◆ ◆
斎藤美奈子、webちくまでの記事から リンク、こちら
ベストセラーの内容に問題があるとして、反論本が出たケースはこれまでにもあった。大宅賞を受賞した山本七平(イザヤ・ベンダサン)『日本人とユダヤ人』を批判した浅見定雄『にせユダヤ人と日本人』、妹尾河童『少年H』を批判した、山中恒+山中典子『間違いだらけの少年H』などが代表的な例である。
本書でも菅豊さんが指摘しています。
いきなり梅原猛の名が飛び出してくるとは! 50年以上も前、高校で国語担当だった学級担任に勧められた『隠された十字架』にわくわくしたものです。『水底の歌』を続けて読むと反論があることを知り、次第に熱も冷めた黒歴史を思い出しました。
P.416
また、哲学者・梅原猛に代表されるような交互学とは異なる分野の専門家たちが、ときおり知の越境──知の領空侵犯?──を繰り返し、考古学者たちが扱う事物や時代へ言及してきた。そのなかには、考古学の専門知から判断して首肯できないものがあった。そして、考古学者はそういう状況に慣れっこになってしまった。
すると、ほかにもこんなものが
『進化思考』の件
『進化思考批判集: デザインと進化学の観点から』
伊藤潤と松井実と林亮太による本
山本七平賞を受賞した巷で話題の本『進化思考』の疑似科学を徹底的に検証。日本インダストリアルデザイン協会最年少理事長の衒学的物言い、論理の破綻、目に余る不勉強に対してデザイン界と進化学界から3人の博士が立ち上がり、一刀両断。自分の得にはならない、だが誰かがしなければならない、雪かきのような重労働。
→ 雪かきのような(重労働)と呼んでいるところ、『土偶を読むを読む』と同じ。
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