[NO.1645] 絶景本棚3

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絶景本棚3
本の雑誌編集部 編
本の雑誌社
2024年03月25日 初版第1刷発行
255頁

『本の雑誌』巻頭を飾る名物企画をまとめたシリーズの第3巻です。今回も見応えある書棚が多いことに満悦至極。

〈出版社サイトページから〉

[登場する36人の本棚](いくつか順番が入れ替わっていました)+前振りフレーズ を追加

第1章 国士無双編
角田光代 天空に広がる造り付けの世界
津野海太郎 興味の変遷がひと目でわかる
東雅夫 怪獣フィギアとフェイバリット
山崎まどか 自作仕切り板で分類された見えるデータベース
田口俊樹 富士山を望む高さ四メートルの本棚
塚田喜幸 酒瓶とともに並ぶ一軍の本たち
アルビレオ 部屋の中央を占める「多重人格の本棚」
中野雄一 ミニギャラリーのようなスペースで本と音楽を楽しむ
岩井清隆 書棚に納戸、仏間に寝室、そして廊下。本棚は増殖する

第2章 万里一空篇
柳下毅一郎 ジャンルというより「仲間」で分類。特殊翻訳家の特殊な本棚
V林田 七〇年代黎明期からゲーム機の景品まで、十年かけて収集した麻雀漫画が並ぶ!
津田淳子 七列七段の本棚で「印刷・紙・加工に首ったけ」を体現する
岩郷重力 揃える癖がつく!? オリジナルカバーが並ぶ白い本棚
鈴木宏宗 図書館、文献学、目録学、書誌学、出版、古本。本の部屋は「本」の本でいっぱい
川村康文 科学書から人生の指南書まで、なにが出てくるかわからない、ジャンクな本棚
織作千秋・夏子 高さ何センチの本が何メートルありますか?
荒川佳洋 手製の見出し板で一目瞭然、著者別五十音順に並ぶ文庫棚

第3章 桜梅桃李編
高山羽根子 分類の基準は「野球であるかないか」
林雄司・べつやくれい 細かいことは気にしない! グラデ崩しの宝箱
大森皓太 珈琲を淹れて本を読む。ブックカフェ独り占め状態のリビング
島田潤一郎 カーテンは閉めっぱなしで日々調整が続くテトリス本棚
福島浩一 家族の歴史がここにある
田村雄次 ランニングドクターのアドリブな「書院」
染田屋茂 大小六十冊以上の辞書・辞典が揃う翻訳家の仕事部屋
山本直樹 スペース効率を追求した三メートル強の自作本棚
柳瀬徹 自分のためには整理はしない、流転の本棚

第4章 行雲流水篇
吉田戦車 ふすまを開けると本が現れる
吉川浩満 紙かデータか、折り合いに悩む進化途上の壁
遠藤論 築九十六年の洋館に造り付けたおもちゃ箱
高橋和男 断捨離を経て残った一万冊! 一軍ぞろいの本棚
円堂都司昭 現在進行中がひと目で分かる、参考文献のようなヴィヴィッドな本棚
巖谷純介 作家の生年順に並ぶ文学な棚
植村愛音 サブカルから他人の日記まで、本は手前に面を揃える
書物蔵 三階建てのビルを書庫兼書斎にリフォーム

入力に手間がかかりましたが、一人ずつに添付されたフレーズが魅力あります。

 ◆ ◆

その昔は、「書斎」の写真が流行りました。そんなタイトルの書籍(シリーズ)もあったりして。ところが、今の時代は書棚なんですね。個人であっても「書庫」を所有することが、格別珍しいことではなくなっているのです。(いったいどんな個人だよ! という突っ込みはさておき)。あこがれの書庫ですな。「書棚」は続くよ、どこまでも!

P.125
 元翻訳職人の織作千秋さんと夏子さん夫婦は二〇〇〇年に自宅を新築した際、建築家に本が多いと相談したところ「高さ何センチの本が何メートルありますか」と聞かれ、判型別に回答した。その結果、完成したのは奥行き五・四六メートル、幅二・七三メートルの書庫で、八十センチ幅の本棚が十四棹造り付けられていた。夫妻はさらに愛用のスライド式書棚二棹をそのために空けられた壁面に設置し、共有スペースとして使用。新築時に相当量を整理したが、次第に棚からあふれてきたため、三年前に日本の小説を中心にダンボール三十箱ほどを処分。(以下略)

高さ何センチの本が何メートルありますか? こんなこと聞いてくれる建築家がって、いいな。ウチの場合...... 止めておきます。

 ◆ ◆

まえがきじゃないけど、それに似たような位置づけにあたるところに書かれているのが、次の文章

P.4
本の雑誌の巻頭連載「本棚が見たい!」書斎編の書籍化第三弾。豪華絢爛眉目秀麗の美しい本棚から、集めに集めたマニアな棚、そして日々調整中のテトリス棚まで、色とりどりの本棚が見参。どうしてこの本の隣にこのほんが!? なぜこの本が三冊も! と首をひねったりビックリしたり。ルーペ片手に隅から隅まで「絶景本棚」を堪能ください。

よそ様の本棚の写真を見て、(それもルーペ片手に隅から隅まで)、そうして堪能する、という行為(楽しみ)を理解できない人もいるのでしょうねえ。もしかすると、そっちのほう(理解できないほう)が多かったりして。えー? ですよ。

『本の雑誌』連載時に気になったところが、ここであらためてよみがえってきたことに、自分で驚いてます。

 ◆ ◆

いちばん惹きつけられたのが、岩井清隆さんの本棚でした。肩書きが読書人というのも、なんだかな。

一万冊を超える蔵書量というのには、今さら驚きません。分量よりもそのジャンルです。

人によって違いはありますが、サブカル系の本が多い中、岩井清隆さんの蔵書ジャンルは突出して王道を占めているのです。最後のページ写真はソシュールを中心とした言語論だけでまるまる書棚2段です。

真ん中に挟まれた見開きでは、チョムスキーや生成文法関連から山田孝雄の日本文法講義まで、四段にずらっと並びます。

もちろん、そのページの前後は国内外の文学作品、全集がずらっと。ずらっとばかりです。箱入りの国書刊行会から岩波文庫まで。マンガも少しはありますが、ほとんどがサブカルではありません。

岩井清隆さんとは、いったいどのようなお人なのでしょうか。

P.72
五十ミリレンズを五十本所有していたというカメラ熱、そしてピーク時には年に七百五十本観たという映画熱が収まった四年前から本の道へ一直線。あっという間に棚は埋まり、納戸に市販のスライド棚を......。(以下略)

いくら「本の道へ一直線」とはいえ、この分量(それもメインストリームの人文書や文学作品ばかり)。全集ものをばんばんお金に任せて揃えたというのでもなく、いちいち種類別に購入していったと思える本が並んでいます。一朝一夕では揃えきれるはずはありません。昔から持っていたのではないかな。

 ◆ ◆

その昔、処分した蔵書にあった書名を見つけると、ドキッとします。

V林田さんの書棚から
p.85
『香具師口上集』(室町京之介、創拓社)

悲しいかな、老眼の身には、ルーペを使っても、厳しかったりします。