ユリイカ 2024年3月号 特集=柴田聡子

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ユリイカ 2024年3月号 特集=柴田聡子/第56巻第4号(通巻818号)
青土社
2024年03月01日 発行
245頁

NHK Eテレに、毎朝6時55分から7時までの5分間番組「0655」があります。10年くらい前、その「おはようソング」コーナーで「みかんをむくのはどっちから」を歌っていたのが柴田聡子さんでした。同じメロディーで「チョココロネをたべるのどっちから?」という別の歌もありましたっけ。

ネット検索するとシンガーソングライターでした。ときどきYouTubeで視聴して、「あなたとわたしのメディアプラクティス」なんて、癖になりました。10年くらい前のことです。

音楽の方面でしか知らなかった彼女の名前が、『ユリイカ』で特集だというので驚きました。もっとも、こちらが知らなかっただけで、カニエ・ナハさんの文章「島から銀河へ、その先の先へ/柴田聡子の一二年をめぐる」によれば

P61
『現代詩手帖』2017年7月号 詩「佐野崎」
『すばる』2017年7月号 詩「結婚しました」
『三田文學』2019年冬季号 「WE'VE ONLY JUST BEGUN」
『朝日新聞』2022年3月16日夕刊「歩き出す言葉たち」に寄稿した詩「柔らかいんですね門は」
『文學界』2018年1月号~2023年10月号 連載エッセー「きれぎれのハミング」
 →書籍化『きれぎれのダイアリー 2017~2023』(2023年10月23日、文藝春秋刊)

P61
詩/作詞の境界、文学/音楽の境界を、表現媒体、発表方法というところでも軽妙に跨いでみせ、それらの境域に一石を投じてみせた。

だそうです。なるほど、こちらの不勉強でした。文芸誌への寄稿も増えたのですね。

広告を見ていると、「ユリイカ 2024年3月臨時増刊号 総特集=92年目の谷川俊太郎」とありました。やっぱり、「ユリイカ」で特集を組まれるというのは、なかなかのものですよね。

 ◆  ◆

なにかの冗談かと思ったのが、星川 彩さんの「《カープファンの子》との付き合い方」でした。あな、懐かしや。かつての『現代思想』誌みたいで、ロラン・バルトを援用しています。可笑しく感じてよかったものかと、立ち止まってしまいました。ここで取り上げられているように、歌詞も独特でしたが、ギターを弾く右手のストロークが気持ちよくて、気になった曲です。


最近の『ユリイカ』の特集は、こんなにボリュームが増えたのかと感心しました。かつては、特集とはいいながら、その分量がずっと少なかったものです。

特集からはずれて、そんな数少ない「連載記事」のなか、

P8
忘れられぬ人々*29
故旧哀傷・中村豊/中村稔

が、サブタイトルのように、忘れられません。あの詩人の中村稔だよなあと、何度も筆者名を確認してしまいました。

兄の豊さんについて、生々しいあれこれを書いています。身内が読んで、どうなんでしょう。年齢を重ねると怖いものがなくなるといいますが、これがそうなんでしょうか。いやはや。