[NO.1617] 寒山の森から/憧れの山暮らしをしてみれば/ヤマケイ文庫=Yamakei Library

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寒山の森から/憧れの山暮らしをしてみれば/ヤマケイ文庫=Yamakei Library
田淵義雄
山と溪谷社
2022年11月10日 初版第1刷発行
260頁

偶然見つけたときには目を疑いました。「どうしてこんなに新しい表紙なんだ?」 「そうか、復刊したんだ。」それが、この本を前に考えたことでした。

思えば本書は当時の愛読書でした。巻末の説明によれば、最初の刊行は1986年とあるので、おそらくそのころのことだったのでしょう。何度読み返したことか。初版で買ったはずです。愛読誌のひとつが「BE-PAL(ビーパル)」でしたから、出版されてすぐに買ったのではなかったでしょうか。

そこに「二十五年後」と題した文章をつけ足してあるのだといいます。こりゃ、まあ読まないわけにはいきません。

口絵のカラー写真を見ながら、当時読んだ内容を思い出しました。赤い三角屋根、毛糸帽子の著者、くるっと尻尾のまわった愛犬カール。目次に目をとおし、ぱらぱらページをめくると、それこそ幾多のことが思い出されます。

最初にその「二十五年後」を読みました。しいて最近の出来事を紹介しているわけではありませんが、作者田淵さんのこれまでのこと、この頃のことがじんわり伝わってきます。二編あるうちの最初の方が好きになりました。エッセイです。(全部がエッセイかな)。

つづいて樋口明雄さんの「解説」を読み出して、手が止まりました。

P255
 ともに焚火を囲みたかった人たちがいる。
 野田知佑さん。芦澤一洋さん。加藤則芳さん。本山賢司さん。
 そして――田淵義雄さん。
 知る人ぞ知るアウトドアの達人達だ。みんな、私にとって憧れの人たちだった。いずれも、ついぞ夢が実現することなく、私よりも先に次々と逝ってしまった。

「えっ」と絶句です。すぐにネット検索して、うっすらと思い出しました。そういえば、そんな訃報記事を読んだかもしれません。

野田さんが亡くなったことは覚えています。でも、時期としては田淵さんの方が早くに亡くなったのですね。意味もなくあせりました。

『寒山の森から』は処分していないはずです。いや、少し自信がなくなってきました。

思い出す言葉の数々。金峰山、川上村、フライフィッシング、コールドマウンテン、スバル(ステーションワゴン)。そういえば、昨日のネット記事で、ステーションワゴンの車は売れなくなったとありました。なんだかなあ。

 ◆  ◆

P261
*本作品は。一九八六年に晶文社より単行本『寒山の森から 憧れの山暮らしをしてみれば』として刊行されました。本書は同六刷(一九九〇年)を底本とし、「二十五年後」二編と樋口明雄さんの解説を追加したものです。
(途中略)
*用字用語に関しては、原文の趣を損なわぬように配慮し、読みやすいように表記をかえた部分があります。

P262
初出誌一覧
*コールドマウンテンの新参者――『山と渓谷』(山と渓谷社発行)1985年3月号
*冬を数える~冬の森からの贈り物――『共済時代』(全労済発行)1985年2月号~1986年1月号
*モーターサイクルの旅――『オートバイコネクション2・全撮影長濱治(C
・B・Sソニー出版1983年刊』
*冬の旅、ソフトハウス、又はティーピー、ぼくの夏山登山、カヌーイング、村営廻り目平キャンプ場――『Cartopia』(富士重工業株式会社発行)1985年2、4、8、9、10月号
*ロック・クライミング、鳥、夏を割る、沢歩き、マツタケ狩り、フール・オン・ザ・ヒル、冬の山のてっぺんで、山小屋でちょっと一泊、焚火学、雪原トレッキング、犬と散歩、モーターサイクル――以上『Number』(文藝春秋発行)63号、80号、103号、86号、98号、96号、70号、101号(1982年~1984年)
*フライフィッシング教書、八ヶ岳から帰ってきた青年――『Yasei』(クロスロード刊)1983年
*地付きフライロッダーのジレンマ――『FlyRodders』(地球丸発行)2007年1月号
*秋風と四方山話――『WATER』(地球丸発行)2007年1月号