「本の雑誌」2024年1月 No.487 鏡餅てんてこ舞い号 特集:本の雑誌が選ぶ2023年度ベスト10 |
特集 2023年度ベスト10は全部で9つの部門からなっています。トップの「社内座談会実況中継」から、これはというものが残念ながら見あたりませんでした。この部門は、社員が選ぶノンジャンルのベスト10、かつてめぐろこうじさんが参加していたコーナーでした。
それにくらべ、「読者が選んだベスト1」は興味をひくものが多かった気がします。
おやっ? と思った1位。
P20『マルクスに凭れて六十年 自嘲生涯記(増補改訂新版)』岡崎次郎/航思社
この本のことは、後のページでも挙げている人がいました。そこで書かれていたことが忘れられません。著者の最期について、壮絶でした。
『きみが住む星』池澤夏樹/E・ハース写真/角川文庫
通信制大学を終えるにあたって、スクリーニング仲間の全員にこの本を贈っただそうです。絶版なので、ネットや古書店をまわってかき集めたとあります。それだけ惚れ込んでいるということです。幸せな本です。ネットで検索すると、角川文庫版よりも文化出版局版の方がよさそう。
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ここから 「2023年度 私のベスト10」
北村薫
毎年トップに掲載されていて、読むのが楽しみです。
①『健さんのミステリアス・イベント体験記』松坂健/盛林堂ミステリアス文庫
②『濃霧は危険』クリスチアナ・ブランド/宮脇裕子訳/国書刊行会
③『ツユクサナツコの一生』益田ミリ/新潮社
3冊のほかに、こんな記事が。気になってしまいます。
P75
今年もいろいろな本と出会うことができたが、『蛍日和 小谷野敦小説集』(幻戯書房)中の表題作は、著者のいう「私小説」のあり方を実作で示した名品だった。
ほめていますよ、北村先生が。
久世番子さんの推す3冊目にあった文章から
P79
「いつか終わるであろう時間の残りの一口を味わう」感じが好きなのです。
23年ぶりに同居することになった母親との生活。
「ここから本格的な介護になるかわかりませんが」この続きが、先にあげた文につながります。
「いつか終わるであろう時間の残りの一口を味わう」感じ というところに、あれま と感じました。
P80
書店員三氏が選んだこの三冊
河野寛子(未来屋書店宇品店)
②『機巧(からくり)の文化史 異聞』村上和夫/勉誠社
今年一番変な本 として紹介しています。気になるなあ。
っと思ってネット検索したら、WEB本の雑誌 に河野寛子さんによる記事が出ていました。「からくり」といえばその昔大好きだったNHKTV番組「からくり儀右衛門」でしょう、と思ったら、そのとおりでした。同番組主人公田中久重についても扱っているとのこと。
P82
佐々木敦
②『おれに聞くの?』山下澄人/平凡社
副題「異端文学者による人生相談」。実際にネットの人生相談をまとめた本だが、山下澄人の極めてオリジナルな、そしてすこぶるまっとうな文学観が全ページにわたって展開されたいる。その超然としてしなやかな思考のありようは、ほとんどが思想書、哲学書と言ってもいい。
③『銭湯』福田節郎/書肆侃侃房
③は私が雇われ編集長を務めていた文学ムック「ことばと」の新人賞の第四回受賞作なので、ここで挙げるのはいささか気が引けるのだけど、(途中略)。とにかく無類に面白い。
こんなほめられ方をされる、幸せな本です。
P85
SNSほんの紹介者二氏のベスト3
けんご
『アリアドネの声』井上真偽/幻冬舎
『君が手にするはずだった黄金』小川哲/新潮社
『あなたが誰かを殺した』東野圭吾/講談社
P86
橋本輝幸
『あなたは月面に倒れている』倉田タカシ/創元日本SF叢書
『幽玄F』佐藤究/河出書房新社
P90
2023年度 現代文学ベス10
『トラスト』のめくるめく読書体験に興奮!
=佐久間文子
『トラスト』は、「発明と呼びたくなる独創的な構成に魅せられた。(以下略)」佐久間さん、手放しでほめてます。
①『トラスト』エルナン・ディアス/井上里訳/早川書房
②『君が手にするはずだった黄金について』小川哲/新潮社
P94
2023年度ノンフィクション ベスト10
依存症の神話を解体するベスト1だ!
=栗下直也
⑨『マルクスに凭(もた)れて六十年』岡崎次郎/航思社
「日本中で唯一人マルクス主義に殉じた」とも表されるだけに、その最期がすごい。「自宅マンションを引き払った夫婦の足取りは、品川・伊東・浜松・京都・岡山・荻・広島を巡ったことがクレジットカードの使用記録から確認。そして同年9月30日に大阪に宿泊したのを最後に足取りが途絶え、現在でも生死は確認されていない。」
どうやらこの話は、その筋では有名だったようです。本書についてとならんで、ネットには詳しく出ていました。なるほど、そうして復刊なんですね。
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P146
三角窓口
▲ハモさんの神保町史跡旧跡案内第三回は「神田猿楽町町会詰所」。錦華通りを北へ歩き、立ち食いそば「肥後一文字や」を通り越した交差点の右手にあるレトロな建物だ。なんでも一九一六年に猿楽町駐在所として建てられたそうで、その後、駐在所は廃止となって町会の詰め所として使用されているらしい。保存状態がよいため、映画やドラマの交番ロケ地として使われることも多いとか。緑色のドアがおしゃれです。
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