前回の(読みとおせなかった『空をこえて七星のかなた』2022年11月 5日)で味をしめたので、またこのパターンでやってみます。
読むことの歴史/ヨーロッパ読書史 ロジェ・シャルティエ/グリエルモ・カヴァッロ 編 田村毅/片山英男/大野英二郎/月村辰雄/浦一章/平野隆文/横山安由美 共訳 大修館書店 2000年05月01日 初版発行 634頁 |
そもそも「本」の歴史ではなく、「読むこと」の歴史です。そこが類書とは違います。
学術書です。634ページもあり、重いので、お手軽には扱えません。巻末には
・訳者あとがき 527
・参考文献 561
・原注 629
・索引 634
があります。ページの数字を見ればわかるとおり、参考文献だけでも大部です。
残念なことに、目次を掲載しているサイトが見当たらないことです。版元の大修館書店で検索をかけても、「該当する書籍がございません。」でした。紀伊國屋書店のページがいちばん詳しかったです。リンク、こちら。
目次
序章
第1章 アルカイック期と古典期のギリシャ―黙読の発明
第2章 巻子本から冊子本へ―ローマ世界における読書
第3章 テクストの読解、筆写、解釈―中世前期における修道院の習慣
第4章 スコラ学時代の読書形式
第5章 中世後期の読書
第6章 ユダヤ人社会の読書―西ヨーロッパ中世における
第7章 人文主義者が読む
第8章 宗教改革と読書
第9章 読書と反宗教改革
第10章 読書と「民衆的」読者―ルネッサンスから古典主義時代まで
第11章 十八世紀末に読書革命は起こったか
第12章 十九世紀の新たな読者たち―女性、子供、労働者
第13章 読書のための読書―読書の未来
本書の立ち位置として、参考になりそうなのが、P527 訳者あとがき アナール派と文献学の出会い というところ。
冒頭を引用します。
P527
訳者あとがき アナール派と文献学の出会いヨーロッパを中心として現在までに生成の過程にある「読書史」Historie de la lecture とは、いったいどのような方法により、何を明らかにすることを目的にした学問であるのか。これについては、本書『読むことの歴史 ヨーロッパ読書誌』Historie de la lecture dans le monde occidental の編者の一人ロジェ・シャルティエによるマニフェスト的な序章が説明を与えている。
今現在、アナール派の扱いはどうなんでしょうか。みすず書房の『〈子供〉の誕生』を買ったのは40年も前のことです。おやっと思ったところに、第13章にあったデータの年があります。
世界各国の文盲者数を紹介しているのですが、それが1980年と1985年を比較していました。(そもそも文盲という言い方が、いかがなものか)。公共図書館の貸し出し数は1980年の統計とあります。(P495)
本書が日本で出版されたのが2000年。元の版が1995年と1997年だそうです。
ちなみに大修館書店から出ている本書は現在絶版です。日本の古本屋サイトでも出品されていませんでした。Amazonの古書値で、安くても12500円。表紙裏の定価は [本体6000円+税] とありました。
◆ ◆
もともとは、先日読んだ轡田隆史さんの2冊のどちらかに出ていたことがきっかけです。([NO.1578] 100歳まで読書/「死ぬまで本を読む」知的生活のヒント [NO.1579] 1000冊読む!読書術 のどちらか)。
轡田さん、この分厚い大著を通読したのでしょうか。
永遠の文庫<解説>名作選/リテレール別冊(17) 斎藤慎爾 編 メタローグ 2003年08月20日 第1刷 301頁 |
今はなき出版社「メタローグ」。同じく懐かしき雑誌「リテレール」の別冊です。
コンセプトが面白し。文庫解説の名作選です。選択のはばは「永遠の文庫」と思えないものもありますが。ちなみに、本書リテレール別冊(17)の次リテレール別冊(18)は『永遠の文庫「解説」傑作選』です。
わざわざ新しい解説を読みたくて、同じ内容なのに、べつの出版社から出た文庫を買ったこともありました。若気の至りです。有名な翻訳書でもないかぎり、今はそんなダブって出版されるなんて、ありえないでしょう。景気のいい時代の話かと。
目次をながめていると、こんな人がこの作品について書いていたのかと思って、それだけでも十分に楽しめます。逆に、この作品ならこの人だろうとというペアも、それはそれで楽しめるのです。見ているだけでもいいかもしれません。昔、文庫目録をながめていたときの感覚です。
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