[NO.1573] 噺家と歩く「江戸・東京」/こだわり落語散歩ガイド

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噺家と歩く「江戸・東京」/こだわり落語散歩ガイド
長井好弘
アスペクト
2010年03月10日 第1版第1刷発行
191頁

12年も前の取材なので、街歩きの指南書としては普通は役に立たないかもしれませんが、なにしろ扱っているのが落語散歩ガイドです。落語の噺にちなんだコースを、ちなんだ噺家と一緒に、長井好弘さんが歩くのですから、今読んでもそりゃ面白い。

この本を片手に紹介されたコースに出かけてみても面白しろいだけでなく、読み物としても絶品です。長井さんと噺家との与太話みたいな掛け合いを楽しみながら、のんびり読めました。

目次と散歩コース
一、五街道雲助  
「明烏」と浅草散歩(浅草寺雷門~吉原)
二、古今亭志ん輔
「品川心中」と品川散歩(品川駅~荏原神社)
三、柳亭市馬
「転宅」と人形町散歩(人形町交差点~明治座)
四、柳家喬太郎
「結石移動症」と池袋散歩(池袋演芸場~池袋駅東口)
五、柳家三三
「文七元結」と隅田川散歩(吾妻橋~言問橋~吾妻橋)
六、春風亭一之輔
「茶の湯」と根岸散歩(鶯谷駅~根岸)
あとがき

それぞれの章ごとに、取り上げた噺のあらすじと噺家の説明と回るコースの略地図が出ている。章立ての扉や文中にも噺家の写真が見られる。その服装に違和感を覚えます。年齢が上であるほど、昭和の塾帰りみたいな感じ。テレビでお笑い芸人が食レポやっている姿とのズレ。三三さんから一之輔さんあたりは違うかな。12年前だし。

 ◆ ◆

五街道雲助さんの本家が土手の伊勢屋さん。ご実家は本所で

実家は爆弾あられ、そば屋、寿司屋、天麩羅屋、おでん屋といろんな事をやってましたですね

だそうです。江戸の風が吹いていると談志が評したというのもうなずけます。飄々と歩く浅草がよかったです。

五街道雲助古今亭志ん輔柳亭市馬柳家喬太郎柳家三三春風亭一之輔とこうして並べてみると、ひとつの傾向がありますね。一之輔さんと長井さんとのつきあいを読むにつけ、一之輔さんの出世するわけが理解できたみたいです。賢いし、それだけじゃない気の配り用もあるし。ごぼう抜きで昇進したというのもわかる気がします。もっとも、長井さんと馬のあうやり取りを読んでいると、心地いいところが(この記事での)魅力です。