「本の雑誌2022年4月号」から、読みたくなった記事3本

00.jpg

(1)
P72
マガジン多誌済々
GALAXY OF MAGAZINE
ゆるい会話の心地よさ
◎下井草秀

『大余談』立東舎、デザイン・小野英作

年に1号のペースで、2010年からスチャダラパーが刊行を続けてきたインディーズ雑誌「余談」をまとめた本。内容はゲストへの(インタビューではなく)雑談が中心だという。

ゲストの名前
根本敬、玉袋筋太郎、池田貴史、加山雄三、いとうせいこう、久住昌之、宮沢章夫、清水ミチコ、天久聖一、バカリズム、岡村靖幸、五味太郎、都築響一、のん、中原昌也、みうらじゅん、藤原ヒロシ、電気グルーヴ、小泉今日子

チェーン系のカフェやファミレスで、隣の客の会話に聞き耳を立てるようなゆるい感覚が何とも心地よいのだそうだ。

下井草さんが取り上げている根本敬、玉袋筋太郎、池田貴史、加山雄三のエピソードがおもしろい。

(2)
P96
鉄道の本棚
貨車駅舎をイラストで紹介するビジュアルブック
=V林田

『訪問貨車駅舎』 レイルウエイズ グラフィック (著) 、(21年、グラフィック社)AD・アダチヒロミ(アダチ・デザイン研究所)

老朽化した木造駅舎を低コストで置き換える手段として、北海道を中心に80を超える数の貨車が、駅舎に改造された。国鉄末期の1980年代にそうして生まれた貨車駅舎も、現在は全国に30しか残っていないという。その30駅と、失われた53駅をカラーイラストで紹介している。

hutamataeki.jpg

描いているのは、ペンネーム豊洲機関区さん。1ページをまるまる使って、屋根を外して上から俯瞰したような絵だというから、かつての妹尾河童さんが得意としたような感じでしょう。ここでは、二股駅というイラストが抜粋されていて、それを見る限り、河童さんのヨーロッパで泊まったホテルを紹介した図などに酷似している。

(3)
P101
●ユーカリの木の陰で
名文家
◎北村薫

『文章読本』向井敏、文春文庫

星新一の文章のすごさは、読むことになれない人には理解できない。それを絵解きしたのが向井敏だ。

と書き始めて、向井敏の『文章読本』に取り上げられた星新一(の文章)を紹介する。星新一の書く小説だけでなく、翻訳にもそれは当てはまる。たとえとして紹介するのがフレデリック・ブラウンを翻訳したもの。

向井敏『文章読本』からの孫引き

《星新一は無重力の文体とでも呼んでみたいような、不思議な文体をもつ作家であ》り、《無愛想で、突き放した、どこか金属質の響きをもつ、それでいてけっして冷たいというのではない、明晰な文体。そう、ここには単に上質というだけではない、独創の刻印を打たれた文体がある》

星新一の全訳にかかる『フレデリック・ブラウン傑作集』はSF名作集という以上に、フレデリック・ブラウンと星新一という、二つのめざましい才能が合さって成った稀有の一冊である。

今度は北村先生の文章からの引用

 先日、神保町でそのサンリオSF文庫版を手に入れた。持ってるぞーーといいたくて、この一文をかきはじめたのだ。

御馳走様でした。