本の雑誌2021年5月号(昨年の5月号) 特集=本屋がどんどん増えている!
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P129
サイコドクターの日曜日
風野春樹
当事者の語りで考える症状論
印象深い比喩がある。砂漠の国の民が、北国で初めて吹雪を体験したとする。その人は、肌に痛みを感じる、砂嵐に似ている、など自分の知っている体験に置き換えて表現しようとする。しかし、それを聞く方も砂漠の民なので、その人の語る話から吹雪がどんなものか想像するしかない。統合失調症の語りとはそういうものだ。
言語では表現できないものを語る記述を数多く集めることで、本来の体験に迫ろうとする。この本はそういう試みである。
この比喩は的確で印象深い。一読、強く記憶に刻まれた。統合失調症の語りというのがどんなものかを比喩でうまく説明している。同時にまた、比喩のはたらきが、どんなものかも伝えている。
このページで紹介している本は、『統合失調症当事者の症状論』(村松太郎編著、中外医学社)。
20年以上も続いている『Dr林のこころと脳の相談室』というウェブサイトがある。相談に答える精神科医 林公一さん独特の語り口が人気なのだそうだ。たとえば、「まさかとは思いますが、この『弟』とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか」という有名な回答があるという。弟の奇妙な嫌がらせがエスカレートして(困って)いるという女性の投稿に対して、質問者自信に病理があるのではないか? と指摘しているのだ。まるでサイコスリラー小説ではないか。
ここで紹介しているウェブサイト『Dr林のこころと脳の相談室』を開いて記事を読んでみた。リンク、こちら。 投稿内容のすべてを読むことができるので、いくつか過去の投稿と回答を読んでみた。ぜひ、実際に記事を開いてみることをお勧めします。あーだこーだいうよりも、一読ください。
人類にとって、言語のはたす役割とはなにか。人類のはじまりは、二足歩行でも、火の利用でも、道具の使用でもなく、言語の使用だったんだよ、うん。
ドクターの回答は「医療相談ではなく、事実を伝える」ことですという意味が、はじめは何を言っているのか理解できなかった。それが実例を読むと、すぐにわかったのです。そういうものなんですね。
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【おまけ】
P62
机周遊記
毎日新聞社学芸部記者・広瀬登氏の巻
社内ノマドワーカー
同部署の女性 私がテレワークの時にこの席で仕事してますよね。
広瀬 ごめんなさい(笑)。
--人の机を渡り歩く。
机の主、広瀬さんのなにがすごいかって、原稿を書くのは自席なんだだけど、書けない時には机にいてもエコノミー症候群になるだけだから、出歩くのだと言っているところ。身動きできそうにないこの席にいると、エコノミー症候群になるって、聞いたことがない。ゲラのチェックなどの作業は、ノマド的に社内のフリースペースを求めてさ迷う、ノマドワーカーってのも。
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