[NO.1559] ワイルドサイドをほっつき歩け

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ワイルドサイドをほっつき歩け/ハマータウンのおっさんたち
ブレイディみかこ
筑摩書房
2020年06月05日 初版第1刷発行
251頁

最近、続けて読んだ『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ3部作の著者 谷本真由美さん と ブレイディみかこさん の二人について考えていた。

ちょうど10歳違い。ブレイディみかこさん1965年、谷本真由美さん1975年のお生まれ。

ヘビメタが好きな谷本さん、音楽好きが高じて渡英したというブレイディみかこさん。ともにロックがお好きだという共通点がある。そしてイギリス人と結婚して現地に住んでいるところも。

この本はベストセラーになった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と「まったく同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書」いた、いわば「同じコインの両面である」のだそうだ。ちなみに、メンマのようになったおっさんとは、著者の「連合い」とそのお友達のこと。もちろん、おっさんたちの奥さんたちも。

本書のサブタイトルにある「ハマータウン」については、冒頭でふれている。要するに労働者階級の人々が住んでいる地域を指す。メンマたちが住んでいる地域でもある。

この本に出てくるおっさんたちは、だれもがタフでお人よしで、憎めない人たちばかり。彼らが生活しているイギリスは、かつて「ゆりかごから墓場まで」といわれたほどの福祉が行き届いていた。それが罪つくりな緊縮財政のおかげで、どんどん暮らしにくくなってしまった。どれだけの違いがあるのかを、いろいろな具体例を示して説明してくれている。

もともと階級意識の強いイギリスと日本とではなにが違うか。それが近年、どうなっているのか。たとえばブレグジットも、本当のところはどうなのか。

分断は確実に進行していることが描かれている。

医療や福祉、教育がどれだけひどい状況になってしまったのか。おっさんたちの子ども時代と比べて、現在の違いが説明される。たとえば友人の子どもは、労働者階級ながらも努力して大学に行けた。現在は銀行員としてドイツに住んでいる。奨学金を得られたからなのだが、現在はそれが違う。学費そのものも高くなってしまい、高い利子がつく進学のためのローンを組まなければならい。

医者にかかるのも、どれだけ大変か。あきれてしまった。

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ちょっと賢い労働者階級の子どもや、芸術やスポーツの才能のある貧しい家庭の子どもたちや、成績はそれほど良くなくてもやたらビジネスの才覚のある貧困層の子どもなどが、自らの才能を生かして成功し、階級をずんずん上っていける社会

ではなくなってしまった。むかし保育園の上司が著者に言ったという言葉が紹介されている。

P220
「階級というのは、選択肢がどれだけ与えられているかということなのよ。それが少なければ少ないほど、階級は下になる」

日本との違いは、まだまだある。麻薬、それに移民。ぴんとこない部分もある。