本の雑誌2020年8月号 特集=落語本で笑おう!

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本の雑誌2020年8月号 
砂浜足あと競走号 
No.446 
特集=落語本で笑おう!
本の雑誌社

 寄席に通っていたのは何年前だったか。今やまったく行っていない。TVで落語番組を録画してはいるものの、それも見ていない。TBSの落語研究会くらいは見てもいいかなと思う内容もあるのに、やっぱり見ていない。聞いてもいない。もったいない。

 今月の特集記事の中、巻頭の
落語本で笑おう!
●落語好き対談
落語と花火は生で見たい!
=堀井憲一郎VS杉江松恋
と次の
落語本寄席を作ろう!
◎広瀬和生
がよかった。

 「落語本寄席を作ろう!」では、「本の雑誌落語本寄席」と題して番付表がある。これもなかなかのもの。

小三治の「師匠のこと」
◎大竹聡
もよかった。『どこからお話しましょうか 柳家小三治自伝』(岩波書店)という本が昨年12月に出ていたという。ちっとも知らなかった。『まくら』2冊を読んでから、何年が経ったのやら。いつの間にか、師匠もお年を召した。『落語家論』(ちくま文庫)すら、読んでいない。

P74
特集 2020年上半期ベスト1 に目をとおし、1位から10位まで、書名を見てもまったくわからないことに気がついた。このごろ小説をほとんど読んでいない。

●ユーカリの木の蔭で
失われた原稿
◎北村薫
 北村先生が神保町で見つけたという、某大学が廃棄した『日本文豪資料集成』が気になった。昔の資料をコピーしたものだという。あまりに大部だとも。

 その中で買った『資料集成夏目漱石像二十』というのも気になる。目の付け所が違う。別のところでも、購入したのはある全集の月報を合本したものだった。こういう買い方がいい。

●SF音痴が行くSF古典宇宙の旅(10)
SF界のナンガパルバット北壁を登れ!
=高野秀行
 早いもので、今回で10回目にもなった。で、グレッグ・イーガンについて。以前から苦手だとしていた作家。目黒孝二いわく「わけがわからん」。これって、私の大好きな『ディアスポラ』の解説にあったことでいいのかな。

『バーナード嬢曰く。』第1巻、施川ユウキ、(一迅社)という漫画に出て来るSFマニアの女の子が、イーガンについて言及していると紹介してある。すごい時代になったものだ。おもしろそう。

 ◆ ◆

 大御所鏡明、青山南の大御所は、相変わらずの興味深い内容。

連続的SF話●435
パリの地図で東京歩き
●鏡明
 『EXPERIMENTAL TRAVEL』を実際にやろうとしている本を見つけた

 タイトルが目をひく。いったいどうやったら、パリの地図で東京を歩けるというのか。そこに関連する本として紹介されていたのがこちら。

『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する1 まだ歩き出さない』友田とん著

 なんともとぼけた題名だし、ペンネームもだし。鏡明さんは、これを渋谷の丸善ジュンク堂で偶然に見つけたのだという。Amazonで検索すると、ちゃんと載っていたのには驚いた。

 「パリをロンドンの地図で歩くというのは、フランスのシチュアシオニストたちが、日常を変革するために思いついた手法なのだ」そうだ。「具体的にどのように実行するかは、あいまいなままだった」とも。

 本の雑誌の記事では、パリの地図で東京を歩くための鏡さんなりの考察が書いてある。要は、面白くするために臨機応変に工夫せよということらしい。エッフェル塔を東京タワーに見立てるとか。

南の話(269)
院生、語釈を変えさせる
=青山南

 本の紹介ではなく、東京新聞夕刊連載「このことばクセモノ!」というコラムについて。書いているのは飯間浩明さん。三省堂国語辞典の編纂者のひとりという。

 この紹介がおもしろい。接尾語「み」とか「世界線」なんて、まったく知りませんでしたよ。「ああ、つらみ」や「やばみ」なんて、驚くしかない。

 この記事で青山南さんが紹介している本筋は、有名な英語辞書「メアリアム・ウェブスター辞典」が、「racism」の語釈を書き換えようとしているという真摯な内容。