本の雑誌2020年2月号 特集=「うらすじ」の謎と真実!

特集「うらすじ」は、以前にも「本の雑誌」で扱ったことがあった気がする。

今月は連載ものが面白かった。

P83
●ユーカリの木の蔭で
大岡昇平、語る。
◎北村薫

当時愛読していた『成城だより』(大岡昇平/講談社文芸文庫)について。埴谷雄高との交友、当時有名だった逸話「中島みゆきを知っているか?」。当然、北村先生ならリアルタイムで読んでいたであろう内容。

少女漫画についての逸話、忘れていた。小4になる大岡昇平のお孫さんが用意してくれたという選書の内容が興味深かった。

望都『トーマの心臓』山岸凉子『日出処の天子』十一巻、高野文子受賞作品『絶対安全剃刀』(途中略)大島弓子『綿の国星』岡田史子『ほんのすこしの水』

なにより、最後の終わり方がいつもの北村薫らしくない。

衝撃的だったところは別にある。残念ながら、ここには書き切れない。

これって「反則」ですよ、北村先生! こんな思わせぶりな尻切れトンボで、来月号まで待たせるなんて。

P96
連続的SF話●429
死んだ人たちの新作
●鏡明
星敬の訃報と、二人の歌手の新アルバム

「自分より上の人が亡くなるというのは、まだ諦めもつくが、年下となるとなぁ、ため息しか出てこない。」というフレーズは、昭和の文芸誌コラムなどでよく目にしたものだ。もっとも「なあ」を「なぁ」と書くところが令和だろう。津野海太郎さんのいう「ジーパンを履いた老人」世代の表記だ。

サブタイトルにある「二人の歌手」というのは「ハリー・ニルソンとレナード・コーエン」のこと。ともに新作が出たという。(すでに亡くなっているのに)

そこから「AI美空ひばり」が新曲を歌ったプロジェクトに話が移っていく。紅白にも出て、話題になったもの。鏡明さんの興味が面白い。

P110
三角窓口
道尾or春樹、鳥肌が立つ本はどっちだ!?
△投稿者に数多くの本を薦められてきた娘さんが「昔読んだ本でインパクトありすぎて今だに(ママ)忘れられない本」として道尾秀介『向日葵の咲かない夏』を挙げたという。勧められて唯一読めなかったのが村上春樹の作品だとも。その理由として「『君はさあ』なんて言われたらそれこそ鳥肌たっちゃう」のだそうだ。たしかに、『君はさあ』というのは見たことも聞いたこともない。

▲本をすすめるのが迷惑なら本誌は迷惑雑誌だね(笑)。

「迷惑雑誌」というのは他に目にしたことがなかった。

P115
即売会の世界
石川春菜(八画文化会館)

「八画文化会館」自体が面白い。リンク、こちら

スゴすぎるので全文抜粋したいところだったが、時間がないのでスキャン

P122
●ホリイのゆるーく調査
シェイクスピア四大悲劇の研究
=堀井憲一郎

いやはや、久しぶりに記憶に残る文章だった。あまりにもばかばかしい駄洒落もだが、シェイクスピア四大悲劇をコンパクトに紹介するという企画自体が面白い。読書不人気なこの時代にこれはインパクトあった。

P128
読み物作家ガイド
温かくやさしいものに満たされる10冊
=石本秀一
●加納朋子の10冊

加納朋子さんについて、読んだこともなくしらなかった。けれども、この文章の最後、

ミステリーとして読者を驚かせることは忘れずに、基本的にはハッピーな大団円で温かくやさしいものに満たされる読後感を味あわせてくれる加納さんの作品を、この拙い原稿を読んだことをきっかけに、手に取ってくれる人が増えたらいいなぁと願っています。

を読んで、おやっと思った。ここまで「温かく」紹介しているのは(本の雑誌)でもなかなかなかった気がする。加納朋子さんの作品を読んでみたくなったし。