漱石全集を買った日/古書店主とお客さんによる古本入門 山本善行×清水裕也 夏葉社 2019年04月25日 第1刷発行 210頁 |
「古書善行堂」店主である山本善行さんとお客の清水裕也さんの対談集。手に取るのにちょうどいいサイズ。ハヤカワのポケミスみたい。一気読みで読了。
山本さんは、その著書である『関西赤貧古本道』『古本のことしか頭になかった』について、署名だけは存じていました。関西の古本関連は関東からみて一種独特の風味があって面白いのですが、どうせ行くことはないだろうという気持ちも手伝い、なかなか読むには至らないままでした。
今や東京在住の岡武さんとほぼ同じような年代なのですね。
対する清水さんのキャラクターが新鮮でした。1988年生まれとお若いだけでなく、古本に興味を持たれてからわずか数年間で、よくぞここまで深みにはまれたものかと感心するのみ。本書巻頭には、清水さんが買ってこられた古書の写真がずら~と見開きで12頁。カラーでしっかり背表紙ながら、書名が読めます。どれもいい本ばかり。何割かは自分でも所持しています。買うことはなかったけれども、欲しかったものを見つけて、目移りしてしまいました。それにしても、短い期間でよくここまで、いい本を買っているなあ、と感心するばかり。
並んでいる順番は、清水さんが買った順なのだといいます。隣あっている書名から、「うんうん、なるほど」と、そのときのお気持ちが伝わってくるのです。
全部で4回にわたる対談には、山本さんによる脚注がついており、これも読んでいて楽しい。惜しむらくは索引が欲しかったかな。もっとも、マニアは自分で索引を作ってしまいそうですね。きっと、いるだろうな。
こてこての私小説が好きなのに、海外ものにも話が盛り上がるところも面白い。それでも、ミステリーには行かず、純文学にとどまるところ、なるほど。
神戸の詩人を羅列するところには、さすがにこちらはついていけませんでした。
帷子耀が飛び出てきたのには驚きました。若くして現代詩手帖賞をとり、寺山修司が激賞したという、その雑誌を偶然手にした山本さんがうらやましく思えてきます。東京古書会館の地下で探しても、出会えません。
『昔日の客』と『ボン書店の幻』で盛り上がるところに自分も加わることができたらなどと妄想にふけってしまいました。
山本素白から『素白先生の散歩』を選ぶあたり、ここにもうなずくばかり。他にも文庫で何冊か出てるけれど、値段が高くても一冊を選ぶとなれば、この本が秀逸です。なにしろこれは先日亡くなられた池内紀さんによるアンソロジーなのですから。
巻頭の書影からは、初版の単行本が目をひきます。対談でも触れていましたが、あえて取り上げない(紹介しない)ものがあるとか。当然のことでしょう。(笑)
雑誌について、話題に出ることが少なかったようですが、本当は古書を買うという行為の先にある、雑誌が面白いのですよね。
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