[NO.1451] 東京百年物語1 一八六八~一九〇九/岩波文庫緑217-1

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東京百年物語1 一八六八~一九〇九/岩波文庫緑217-1
ロバート・キャンベル十重田裕一宗像和重
岩波書店
2018年10月16日 第1刷発行
329頁

「東京」というテーマによるアンソロジーの第1巻。明治維新から1909年の期間から、有名どころの作家の小品が選ばれている。ロバート・キャンベルの解説もよかった。巻末、地図2葉「東京府の範囲1878(明治11)年、15区」「上野・浅草周辺図」と年表(1868~1909)もよろし。

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前田愛の『都市空間のなかの文学』を思い出す。東京という括りでアンソロジーを編むという発想は、もっと前に出ていてもおかしくなかっただろう。なにはともあれ、こうした本を手にすることの幸せ。

目次が出版社サイトにあった。リンクこちら。

作品自体は樋口一葉「十三夜」以外、未読。もしかすると、荷風の「監獄署の裏」をどこかで目にしたことがあったかもしれない。

珍しいところで田沢稲舟「医学修行」。略歴の冒頭を抜粋すると


p61
田沢稲舟(たざわいなぶね)(一八七四~九六年)。山形県生まれの小説家。本名錦(きん)。上京して山田美妙に師事し、「医学修行」(一八九五年)、「しろばら」(同年)を発表して世に知られた。同年暮れに美妙と結婚して、合作「峰の残月」(一八九六年)を発表したが、三カ月で派恐懼して帰郷、失意のうちに二二歳で病没した。

で、「医学修行」。今なら少女マンガなのだろう。絵を描く技術が文章力になるのだと考えてみる。俗っぽい擬古文は、さほど読みにくくもない。ただし、口語文に慣れた改行もない文章と女性週刊誌の連載読み物風の筋は、さほど面白味は感じない。

その逆に、漱石の「琴のそら音」は、すんなり読めた。もちろん、漱石のよくあるように、今からみるとおかしな単語は散見しても、最後まで筋を追いやすかった。坂の描写、岸田劉生の「道路と土手と塀(切通之写生)」を想起した。茗荷谷は谷筋、当時はさぞ、起伏が激しかったのだろう。

アンソロジーのテーマである明治の東京。短文ではあるものの岡本綺堂「銀座の空」がわかりやすかった。まるで落語。