[NO.1363] 舟を編む

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舟を編む
三浦しをん
光文社
2011年9月20日 初版第1刷発行

実写版映画を封切りで見たまま、原作の小説を読んだのは今回が初めて。三浦しをん氏の作品を読むのも初めて。

どうしても映画の画面が思い出されてしまいながら、それでも堪能できた。

映画との違いを思い出しながら読む。作者が書きたかったであろうことと、読者受けのために書いてしまったであろうことを深読みしてしまう。

主人公の下宿のリアリティは映画にはかなわない。建物の鳳明館は入ったことはないものの、半世紀近く前に知っていた。なによりも内部の本が興味深い。昔の神保町古本屋街で目にしていたものが多数。全集類の端本なら、自分でも所持していたものがあれやこれやと......。懐かしさいっぱいだった。同時にうらやましくもあった。1冊1冊は買えても、並べられるだけのスペースを確保できなかったのだから。悔しくも処分せざるを得なかったし、今でも持ってはいるけれど、書架に並べられずに箱詰めのままだったりする。それも近々に処分する羽目に......。

ついでに、実写版とアニメ版にも目をとおしてしまった。アニメ版の方が原作に近いところがあったり、三者の違いや共通点があったり、それはそれで面白かった。描かれた時代背景もあるし。

文庫版には例の手紙が掲載されているのには驚いた。

途中の紙屋さんとのやりとりで、「ぬめり」がない! という場面があっただけに、本書の手触りがよかった。さすがに辞書ではないので、ぬめりはなかったものの、カバーのかたさ、本文用紙の厚み。ぐっときたのは、本自体を折り曲げたときの感触。こういう製本もあるのかと思った。