のれんのぞき/大人の本棚 小堀杏奴 みすず書房 2010年9月7日 印刷 2010年9月17日 発行 |
大人の本棚シリーズにふさわしい。これが姉の森茉莉だったら......。解説は森まゆみ。
裏表紙に抜粋されている、「太神楽」冒頭がいい。
p81
生まれた家のある本郷の団子坂から谷中、上野桜木町を経て、根岸へ通じるあの辺一体はたとえどんな道筋でも、横町でも、私には見覚えのあるものばかりで、もし夢にどこか解らないがよく知っている道が出て来たとしたら、必ずあの辺りと思ってよかった。
初出はすべて『酒』(酒之友社)。昭和34年4月~昭和39年8月まで。
「柴又の川魚料理「川甚」」を読みながら、岩本素白にも「川甚」についての随筆があったことを思い出した。素白の方は戦前の川甚で、江戸川からは船の艪を漕ぐ音が聞こえてきたとあった。
昭和35年の「いせ辰の千代紙」は現在の店構えと違う。「櫛の一三や、」といっても、実際に店内に入る度胸はない。TV番組で見たことがあるくらいなので、細かいことはわからない。
なるほどと思ったのは、「入谷の朝顔市と浅草観音のほおずき市」。どちらも、今回の訪問が初めてとのこと。育った家庭の雰囲気から、そのとおりなのだろう。あちこちを「取材」した訪問記が本書の内容なのだ。
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